耳の飾り 「の、ノワール…?どうした、何か気になることでもあったか?」
「…気になると言えば…気になる。ナイヴス、耳の…痛くないの?」
「耳……ああ、ピアスか。開けた時は痛かったかもしれないが…もう忘れた」
「忘れた?」
「それ以上の痛みを俺は知ったからな。だから、どうということはない」
「そう…自分で開けたの?」
「ああ、…ノワールは興味があるのか?」
「うん…私にはないものだから…興味ある。自分がどうかは分からないけど…」
「…触ってみるか?」
そうナイヴスが提案すると好奇心に染まった瞳をナスカは輝かせた。
「いいの…?」
「ノワールにされて嫌なことなんてない」
「…じゃあ、えっと…し、失礼します…」
そっと手を伸ばし、ナスカは歓喜の声を上げた。
「本当に穴が開いてる…今はもう痛くないんだよね…」
「ああ、もう血も止まってるしな。付けないでいると塞がってしまうのが面倒だが」
「塞がるんだ…すごいね」
「人体の不思議だな」
ふっと笑うナイヴスにナスカも頷くように笑う。
「……ナイヴスに良く似合ってるね、そのピアス。うん……かっこいいと、思う」
自分がナスカのことを褒めることはあれどナスカに照れもせず真っ直ぐ褒められることは滅多になく、不意打ちの言葉に思わずナイヴスは顔を覆った。
「な、ナイヴス…?」
突然の異変に顔を覗きこむナスカだったがぽそぽそとナイヴスは呻き声に似た声を上げるばかりだった。
「いや…大丈夫だ、なんでもない……君がそういう子だってこと分かっていたはずなんだ……」
そういうナイヴスの顔はナスカから見ても耳まで真っ赤に染めていた。
「……照れてる?」
「…君なあ、」
「ふふ…いつもナイヴスにしてやられてばっかりだから、少し嬉しい」
子供のように無邪気に笑うナスカに思わずナイヴスの頬は緩む。
「ノワールが、ナスカが嬉しいならいいが…俺も男だ。やられてばっかりでは気に食わん」
そう言ってナイヴスはひょいとナスカを抱き上げるとそのまま膝の上にナスカを置いた。
「な、ナイヴス…?」
そのまま楽し気にナイヴスはナスカの片耳を触れる。
「…ピアスホールを開けるのは俺としては許可できないが、イヤリングくらいならいいかもしれないな」
「イヤリング…?」
「ピアスホールを開けなくても付けられる耳のアクセサリーだ。」
「…似合うかな?」
「ナスカに似合わないわけがない」
「…それは、言いすぎ」
「俺はそう思わないけどな」
くく、と笑いながらナイヴスは顔を寄せナスカは拗ねるように自身の耳に触れるナイヴスの手を引きはがすようにその手を取った。
「ナスカ…?」
「なんか……恥ずかしくて、くすぐったい……」
「それはいいことを聞いた」
「ん、――」
突然唇を奪われ、そして恥ずかしくてくすぐったくて嫌がっていた耳を触られる。二重の熱に支えを求めるように肩を掴んだ。
「…耳、触るの…気に入った?」
「気に入ったというか…ナスカの反応が見ていて楽しくて」
「…そんなに?」
「ああ、そんなに。ナスカは嫌だったか?」
「……知らない、」
ぷいとそっぽを向くナスカに思わずナイヴスは笑みを浮かべる。そしてまた唇を奪いながらナイヴスを考える。密かに選んで贈るか、はたまたデート先で一緒に選んでイヤリングを贈ろうか。と
どっちにしてもナスカに似合わないわけがないと口に出したことと同じことを確信し、そして目の前の彼女を愛することだけに集中した。
-Fin-