【現パロ】思い出をshare 小さな、小さな、まだ私も黒雪も小学一年生だった頃。クラスも帰り道も一緒だったことから、そして幼い頃から仲良くずっと一緒にいたことから行きも帰りも手を繋いでいた。しかしその年頃の子になると男の子と女の子がそうやって一緒にいるのは不思議に思われ、揶揄われることもある。そしてその日の帰り道はまさにそんな風に揶揄われてしまったのだった。
「槐はいや?」
「え?」
「オレは槐とこうやって手を繋いでるのも、いっしょにいるのも、いやじゃない。むしろ、好きだけど…槐は?」
「いやじゃない。私も黒雪と同じ気持ちだよ」
そう返すと嬉しそうに黒雪は笑う。
「じゃあ、あいつらのことなんて気にしてないで一緒にかえろ!」
「わわっ、待ってよ黒雪!」
周りを気にしない黒雪の言葉はその時の私にとっては救いで、とても嬉しいことだったのだ。
***
「え、昔の夢を見た?しかも小学生の頃の?」
私の話を聞いて驚いたような声を上げた。
「私はあの時、嬉しかったんですよ。黒雪の傍にいていいんだって黒雪にそう言ってもらえたみたいで」
素直にそう口にすると握られた手の力が強まるのを感じる。
「……あの時は、槐が離れていっちゃいそうで嫌だったから。だから、槐のためってよりはオレのためって感じ?」
そう黒雪は言ったけどその言葉も含めて私は黒雪が大好きだった。
「それでも、嬉しかったのは事実だから」
「……ふぅん、ねえ…槐」
ちょっとだけ頬を赤く染めた黒雪は名前を呼んでちらりとこちらを向いた。
「槐は、もし逆でも……オレと一緒にいたいって他のやつに言われたって気にしないでいてくれた?」
あの時は自分が言われたから言う通りになりそうになっていたけれど…。
「気にしません。だって私が黒雪と一緒にいたいので、誰かに譲れと言われたって譲りません」
きっぱりと断言すると隣の黒雪は楽しそうに笑った。
「槐、オレのこと大好きだね」
「当然です。それに、黒雪も同じでしょう?」
「まあね」
当然にように返って来て笑ってしまう。
「ね、槐」
そのまま今度のデートはどこに行こうかという話になり最近オープンしたばかりのカフェがあること、そこに行こうという話をいながら歩いて行く。こうやって黒雪と過ごす時間が大好きで、そして重ねた思い出を共有できることが嬉しくてにやついてしまい、それを黒雪に悟られないように頑張る私だった。
-了-