恋のライバルなどいやしない 「ねぇ、ビラール。その…気になることがあるんだけど…」
「なんだ?私が答えられるることなら答えよう」
「えっと…えっとね、ビラールってその…ファランバルドに…許嫁とかいたり、した?」
私の問いに瞬きを繰り返すとビラールは大きく口を開けて笑い出してしまう。
「な、なんで笑うの!?私は真剣なのに!」
「ああ、悪い。お前が真剣なのは知っているとも」
そう言ってビラールは私の額にキスをするが私の機嫌はそれでなおるようなものではなくますます頬を膨らませた。
「機嫌をなおしてくれ、ルル。おかしくて笑ったのではない…嬉しかったのだ」
「嬉しい?」
「ああ。勿論、事実私には許嫁はいない。祖国のことで手一杯だったからな。だが、ルルはそれを気にしてくれた…つまりはいない許嫁に嫉妬してくれたということだろう?」
「嫉妬というか…もし、いたりしたら戦わなきゃいけないかなって」
「戦う?」
「ええ。私はビラールが大好きだし、誰にも渡したくないし、離れたくないから諦められないけどもし許嫁がいて…相手もそうなら戦わなきゃでしょ!?ビラールをかけて」
ぐっと拳を握り込む私。側にいるビラールが息を呑むような声が聞こえ顔を上げた時、強く私は抱きしめられていた。
「び、ビラール!?」
「お前の愛を感じていたところだ」
「愛って…、」
「愛だろう?私は嬉しい、愛するお前にそれほど愛されているということが」
そう幾度となくビラールは私にキスの雨降り注がせる。
「っ、」
「私はずっとお前のものだよ、ルル。あの時、そう決めたのだから」
「…うん」
その言葉に私はビラールの背に腕を回す。そしてそのキスを受け止めるため目を閉じる。私はあの時ビラールの全てを手に入れた。ビラールとの未来を。だからビラールに好きだと愛してると言われると堪らなく嬉しくなってしまうのだ。
近くでは水の精霊の気配が感じられ、リアンの「相変わらず仲睦まじいこと」という声が聞こえてきていたーー。
-Fin-