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    呪専時代っぽい二人です。まだお互いに対する気持ちが友…?な時系列をイメージしています。
    実は新刊に収録している「買い食いのすゝめ」と対になるっぽく書いてますが、内容は一切繋がっていません。
    もしよろしければお読みください🙇‍♂️
    改めまして、灰七webオンリー開催おめでとうございます!

    #灰七
    ash7
    #灰七webオンリー1
    ash7webOnly1

    ホットミルク夜。
    灰原は大層焦っていた。理由は、明日提出する宿題が終わらないため。
    任務の合間に授業という、学生あるまじき生活のせいで、毎日疲れ果て寝落ちて、を繰り返すうちに提出物の存在をすっかり忘れていたのだ。
    幸い残っていた課題は一つだけ。今からやればまだ間に合う!そう意気込んで白紙の用紙に向かったところで、灰原の手が止まった。
    嫌な汗が額から流れ落ちるのを感じて、片眉を引くつかせながら手元の用紙を睨んだ。
    提出課題の科目は古文。灰原が苦手意識を持つ課題の一つだった。
    ああ…最悪だ…。
    灰原の脳内には、未提出の課題があることと、その課題の提出日が明日であること以外に頭になかった。
    だから、白紙の用紙を見るまでこの課題がなんの授業の時に言い渡されたものか気付けなかったのだ。
    おろおろと自分以外誰もいない自室を見渡して、もう一度手元の用紙を見る。何度その動作を繰り返しても結果は変わるわけもなく。
    灰原は観念したように、授業から返ってきたままのカバンの中からくたびれた教科書とノートを取り出して果敢に挑んでいった。

    「…。………?……、……?…??……、…………」

    暫く、小さく唸りながら睨めっこをしていた灰原だったが、結局十数分後には頭を抱えて皺と消し後が多くなった用紙を前に降参していた。
    最後の…最後の手段…。
    抱えた頭の隙間からちらりと廊下に繋がるドアを見やった。
    灰原は、ドア…というよりもそこから移動した先にいる隣人にして同級生を想像していた。
    七海。彼は任務の合間に授業というとんでも状況に音を上げるでもなく、呪霊の討伐はもちろん、授業もその提出物もきっちりこなして見せるスーパーマンみたいな人間だ。
    いつも真面目で、不機嫌そうでどこか近寄りがたい雰囲気のある青年。それでも灰原は、そんな彼がそれだけでないことを見抜いていて、事あるごとに(七海風に言うなら)「ちょっかい」を出していた。
    最近はそのちょっかいにも手応えを感じていて、何となくだが、心を許してくれている気がしている。
    何か確証があるわけではないのだが、どうも灰原が声をかけたときの反応が以前より柔らかくなってきた気がするのだ。
    雰囲気は柔らかくなった…んだけど、どうも最近目を逸らされることが多くなった気もする。全体的に優しくしてくれていると思うので多分嫌われてはいないと思うんだけど…。
    頭を抱えたままどんどん逸れていく思考に気付いて、灰原は頭を掻いた。

    「もー無理!答えを写…させてはくれないし、流石にそれはどうかと思うから、教えてもらおう!うんうん、そうしよう!」

    考えている時間が惜しいし、教えを請うこと自体は悪いことではない。七海が就寝してしまう前にいかないと、本当に希望が断たれてしまう。善は急げだ。
    コレと決めた灰原の行動は早く、机に散らばった文房具とよれた宿題用紙に教科書、ノート。それらを全部抱えて、バタバタと部屋を後にした。

            △

    七海の部屋の前で一呼吸を置いてから、灰原は両手いっぱいの宿題セットを取り落とさないように器用にドアをノックした。

    「七海〜ぼくだよ〜」

    思っていたより情けない声が出てしまい、緊張で肩を強張らせたままドアの向こうの気配を伺う。
    閉ざされていた扉は、想像していたよりもすぐに開いてくれた。
    しかし、扉は数センチ程しか開けられず、その隙間からジト目の七海が少しだけ顔を覗かせた。
    もう風呂も済ませたのか、開いた扉からふわりとせっけんの香りが香って思わず呼吸が止まった。
    そんな様子を気取られまいと、灰原はさっそく本題を切り出した。

    「え、えへ…宿題教えて?」
    「…科目は?」
    「えっと…古文」
    「それは私も得意ではなですね。残念です、では」

    取り尽く島もなく、七海はそう言って隙間から顔を引っ込めた。が、灰原はそれを阻止すべく、慌てて隙間に足を突っ込んで、ドアに縋り付いた。

    「あー!待って待って!お願い!七海のノート見せてほしいだけなの!あれ、教科書より綺麗にまとまってて見やすいんだ!七海と僕、わかんない所大体一緒だと思うし、だからそのノート見せてくれたら、自分でやるから!!邪魔しないから!お願い!」

    情けなく懇願すれば、もう一度、扉が開いて七海が先程よりも険しい目つきでこちらを見上げていた。
    ここで本当に扉を閉められてしまったら、一巻の終わりだ。
    灰原はそんな七海に、同情を誘うように今にも泣きそうな表情を作ってみせれば、七海はうぐっと変な声を出してたじろいだ。
    そうして暫く口をもごつかせてから、大きな溜息を吐いて、扉にかけていた手を離して、ドアを開け放ってくれた。

    「…どうぞ」
    「い、いいの?」
    「わからないときは私ではなく、その場で先生に聞きなさい、まったく…」
    「あは、七海が先生みたい」
    「……今すぐ帰りますか?」
    「あ、やだやだ!」

    やっぱり七海は優しいし頼りになる。そう思って、先生みたいと言えば、それが気に食わなかったようで、すごい顔で睨まれた。
    灰原は思わず先生に叱られた時みたいに首をすくめて、素早く七海の部屋に滑り込んだ。
    灰原が入ってから、背後で扉が閉まる音がする。部屋の造りは自室と同じなので、特に迷うことなく灰原は部屋の奥へ歩を進めた。
    想像通り、部屋の奥には小さな机が置かれていていつも七海が勉強をしているスペースに行き当たった。
    灰原は両手いっぱいの宿題やらをその机に広げて、ふぅと息を吐いた。
    これが宿題、ノート、教科書。
    机の上にぶち撒けたそれらをまとめていきながら顔を上げれば、七海が灰原の手元を覗き込んだまま絶句していた。
    それがどういう感情なのか、灰原はすぐに察しが付いた。
    手元の宿題と七海の顔を交互に見てから、頭をかいてどう弁明をしようか空に視線を泳がせた。

    「ちょっと埋めてみた問題もよくわかんなくて…実は適当に書きました…」

    考えた末に、素直に手元の実情を説明すれば、七海の瞼がひくついたのが見えた。
    もしかしたら、七海が想像していた以上に進んでいなかったのかも知れない。
    他人事のようにそんな感想を抱けば、七海は既に準備済なのであろう鞄から、古文のノートを取り出して、灰原の横に座り込んだ。
    てっきりノートだけを手渡されるかと思っていた灰原は、目を丸くして隣に腰を降ろす七海を目で追った。

    「え…」
    「こんな状態で、私のノートだけ見たってわかりっこないです。ちょっとくらいなら、手伝ってやっても」
    「ほんと!?やった!」

    願ってもない助け舟に、灰原は思わず大きな目を輝かせて、買い気味に七海の方へ髄と距離を詰めた。
    七海は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに不機嫌そうな表情に戻って、灰原を押し返しながら少しだけ離れてしまった。

    「早く終わって、部屋に返ってほしいからです!それに答えを教えるわけじゃありませんから。あくまで考え方だけです。それに私は先生ではないですし、曖昧なところとか自信がない回答もあります。そのあたりは教えることもできませんから」
    「うんうん!大丈夫!七海がいたら百人力だから」

    ほら、やっぱりね!七海は優しい!
    素直に大きくうなずいて笑顔で返事をすれば、七海は眩しいものでも見るように眉に皺を寄せて目を細めた。
    それから、こっちじゃなくてあなたは用紙とノートを見なさいと、宿題を指さされた七海の声を皮切りに、勉強会がスタートした。

                     △
    「おわっ…たぁ〜〜〜」
    「はい、お疲れさまです」

    机に張り付いたまま凝り固まった背中を伸ばすように伸びをすれば、七海は律儀に労いの言葉を返してくれた。
    終わらないと思っていた宿題から開放された快感に身を委ねて、伸びをしてそのまま、宿題の上に身を伏せた。
    七海はその間も机の上の消しカスやメモ、ノートなどを片付けてくれていて、灰原は持つべきものは友だよ〜と情けない声を上げた。
    七海はそれを調子がいいなと少し笑っていなしながら、ノートを元の鞄へ戻しに行った。

    「うーん、読み方がわかると対して難しいこと聞かれてないんだね、古文って」
    「今の言葉と違いますからね、分かりづらくて当たり前です。単語や助動詞の活用などポイントを抑えられれば、あとはどうとでもなる」

    独り言みたいにそんなことを呟けば、七海から返事が返ってきて思わず顔を上げた。
    でも、当の友人の姿は見当たらず、別の部屋に移動したんだと思った。
    それでもこうして会話をしてくれていることが何となく嬉しくて、灰原はそのまま会話を続けた。

    「む、なるほど…おんなじ授業受けてるはずなんだけどなぁ…授業中は何だか分かった気になっちゃうんだよね」
    「一度聞いただけで覚えられれば苦労はしません。復習もせずに覚えられるわけがない。あなた、地は悪くないんですから。真面目に取り組んだらいいのに」
    「え!七海、今僕の事褒めた⁉」
    「なんでそうなるんですか。誰が聞いても、これは学業を全うしないあなたへの糾弾です」

    ふざけた調子でやり取りをしている間に何かがバコンと開く音がした。
    それから、カチャカチャとものとものがぶつかり合う音。
    その後も暫く色んな生活音がしてきて、灰原は思わず体を倒して音がする方向を見やった。
    どうも影になっているようで、七海の様子は伺い知れない。体を揺らして様々な角度からどうにか見えないかと画策してみたが…やっぱり見えない。
    音的に食器の音と…電子レンジの音?
    今はブーンという音がなっているな?と、灰原は考えながら更に首をひねった。
    七海が何をしようとしているかはわからないけど…とりあえず片付けるか。
    机に広がりっぱなしの自分のノートや教科書をまとめながら、自分(と七海)で埋めた宿題に改めて視線を落とした。

    「やっぱ七海はすごいなぁ…」

    すべて埋まった解答を満足げに眺めていると、思わず口元が緩むのを感じた。
    僕が悪いし、ほんと次はもっとちゃんと計画を立ててやらなきゃって反省してるのに。また、こうやって話したり会えたらいいなぁって思っちゃうんだよなぁ。…なんて。七海に言ったらひっぱたかれそう。
    七海の眉間に皺が寄る様子がありありと想像できてしい、灰原は笑いを堪えて肩を揺らした。
    そうしていると、いつの間にか背後に人の立つ気配がした。

    「何を笑っているんです?」
    「っどわ!お、おかえりなさい…?」
    「まったく、いつまで出しっぱなしにしてるんですか。そこに置きたいので、ノートとかどかしてください」
    「え?あ、ごめん」

    あきれたように溜息を吐きながら、七海が両手にカップを持ったまま、机の上を顎でしゃくった。
    言葉がきつい割にはトーンが柔らかい。もしかしたら、気心が知れてきた相手にはこんな風に話してくれるようになる、とかあるんだろうか。
    そんなことを中途半端に思いながら、灰原は素直に机の上を綺麗に片づけて場所を空けた。
    それを見届けてから、七海は両手に持っていたカップの片方を灰原の前に置いた。
    そのまま、七海は定位置と言わんばかりに灰原の隣に腰かけて、両手でコップを持ち直した。
    自身の前に置かれたカップと、隣に座った七海を交互に見て、灰原はパクパクと口を動かして、言葉を探した。
    なに?これ、もしかして僕にくれるの?

    「…何見てるんですか」
    「や、その…これ…」
    「もしかして、もう歯磨きは済ませてましたか?」
    「いや!まだだよ。まだだけど、これ…僕の?」
    「…そうです」
    「な、なんで…」
    「…勉強したら、頭を使うでしょう?適度な糖分の摂取が必要です。それにこれなら寝る前の飲み物としても最適です。……いらないなら飲まなくても結構」
    「い、いただきます!」

    自分で説明しながらどんどん声が低くなって、最後には何故か不機嫌そうなトーンになってしまった七海は、言いながら灰原の前に置いたコップをかっさらおうと手を伸ばしてきた。
    灰原は慌てて七海の手からカップを守るように手に取って、慎重に中を覗いてみた。
    中にはほっこりと温かい白い液体。匂いはほんのり甘くて、ちょっとだけスパイシーだ。
    なんだろう…ホットミルク、だと思うんだけど。この匂いがわかんないな…。
    ふんふん鼻を動かしていると、七海の吹き出す声が聞こえてきて、灰原は七海にこれは何かと問うた。

    「それは、シナモンホットミルクです」
    「あ!この匂い、シナモンか!」
    「…苦手でしたか?」
    「ううん!平気だよ。じゃあせっかくだし、いただきます」

    少し不安そうに眉が下がる七海にありがとうと伝えると、安心したようにまた自身のカップに口を付けた。
    灰原もその様子を見て、同じようにカップを口元へ運んでみた。
    息を吹きかけて乳白色の液体に口を付ければ、たちまち口内に柔らかな甘さが広がった。
    口に纏わりつく濃厚な風味の後に、甘さを引き立たせるようなシナモンの風味。
    なかなか味わう機会がなかった調味料に、灰原は目を瞬かせて喜んだ。

    「おいしい!七海、これすっごくおいしい!」

    夜なのに大声で感想を述べて七海に振り返れば、どうやら反応を伺っていたらしい七海とばっちり目が合った。
    七海は慌てて目を逸らして、しばらく視線が宙を彷徨っていたが、やがて自身のカップに集中して、そうですかと蚊の鳴くような声で返事が返ってきた。

    「これは、小さい頃によく祖母が作ってくれたんです。おやつのときとか、寝る前なんかに」
    「へぇ。おばあちゃんが。それって、素敵だね」
    「…あなたの口に合って何よりです」
    「うん!…今日は本当にありがとう。次からは、もう少し計画的に取り組んでみるよ」
    「ええ、そうしてください。こんなのが毎日続いたら堪りませんから」

    何故だか楽しそうに、そんなことを言う七海に灰原も笑ってコップに口付けた。

    ねぇ七海。また勉強、教えてね。
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    b_g0e

    DONEはっぴばすで、ななみ!
    「好きな人に気持ちを伝えないまま友達ポジでいたら、普通に他人に結婚されてしまう」シチュ?が大好き侍でして。
    ここから見てわかる通り、灰七だけど灰が知らないモブ女とくっつきます。地雷な人は避けてください。(ふんわり現パロ)
    今ではないかもしれないのですが、私は今書きたいと思いました。
    幸福の味灰原雄が好きだと気が付くまで、馬鹿みたいに時間がかかった。
    出会ったのは、大学生の頃。四年生の大学で、自分と灰原の学科は違うが、時々被る必修科目があった。
    黒い髪に快活な性格。誰にでも優しく愛嬌があって、人のいいところを探すのがうまかった。
    こんな不愛想で退屈な私に何度も笑いかけ、根気よく友人を続けていてくれた。
    灰原の笑顔を見ると、まるで太陽を直視しようとしているみたいで、思わず目が細まってしまう。それがずっと不愉快だったのに、いつからかそれでもその笑顔に手を伸ばそうとしている自分に気が付いた。
    七海、七海。
    灰原に名前を呼ばれる毎に、自分の頬の強張りが少しずつ柔らかくなっていくのを感じた。
    どれだけ疑って否定しても、自分が灰原雄に恋をしているのだという結論に何度も何度も行きついた。
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