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    k_tar0ta

    @k_tar0ta

    今日も今日とて男女カプが旨い。
    アライズ・ルミナリアだだハマりしました。

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    k_tar0ta

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    ルミナリアハロウィンのエピローグです。
    全編通して21人全員、仮装させるの厳しい人はキーワードだけ盛り込んでフィニッシュです。

    #ルミナリア
    luminaria
    #ハロウィン
    halloween

    ハロウィン after モーニング in ガルデンブルク「――以上が、リュンヌにおける抵抗勢力鎮圧の概要となります」
    「一人は逃しましたか……まあ取るに足らない些事でしょう。朝早くからお疲れ様でした、アレクサンドラ」
     帝城ガルデンブルク、謁見の間。主が代わって間もないこの城は、当時の宰相による先帝の弑逆という血腥いやり方で指揮系統が塗り替えられたにしては、驚くほど静謐な雰囲気に覆われていた。クーデーターにより即位した新皇帝には依然として敵が多い。正統な継承権を持つ王族やそれに連なる貴族を中心に暗殺や反乱を企てる者は跡を立たず、そのどれもが目的本懐を遂げる前に粛清されていった。
    「では、これよりリュンヌの防衛体勢は本来の水準まで引き上げるということで宜しいですか?」
    「はい、よろしくお願いします」
     抵抗勢力を一斉摘発するために敢えてリュンヌの警戒態勢を緩め、そこに集まって来た疑わしい者達を一網打尽にする。彼らしい計略ではあるが、『叛意の疑い』で多くの血を流すやり方に以前にはなかった性急さと乱暴さを感じ、アレクサンドラは喉元まで出掛かった言葉を呑み込んだ。それは石のようにずしりと重く冷たく、彼女の胸の奥にゆっくりと落ちていった。
    「あらあ……さっすが番犬は早起きねえ……」
     謁見の間に気怠げな声が響く。厳かに開かれた扉から入って来たのはラプラスとバスチアンだった。
    「お前こそ、こんな時間に姿を見せるとは珍しいな」
     含みのあるラプラスの言い方に眉を顰めつつも、アレクサンドラは自身の違和感を優先して言葉を返す。
    「アタシは別に早起きしたワケじゃないわよ、寝てないだけ」
    「いや私だってそうだが……」
     不服そうに言い淀むアレクサンドラの横を通り過ぎて、ラプラスは悠々と玉座へ続く階段を上る。
    「おい、ラプラス……!」
     アレクサンドラの制止に一切構うことなく、ラプラスは皇帝の目の前で立ち止まりその顔を覗き込んだ。
    「ご機嫌いかが、皇帝陛下?」
    「――ご覧の通り、変わりありませんよ」
     皇帝アウグスト・ヴァレンシュタインはその非礼を咎めるでもなく、視線すら動かさずに平坦な声で答えた。
    「おい……流石に立場を弁えろ。皇帝陛下の御前だぞ」
     アレクサンドラが語気を強めると、ラプラスは白けた目で振り返る。
    「はあ……冗談も通じない堅物ちゃんはこれだから。アウグストちゃんに悪さする輩を見つけては片っ端から吠え立てて追い払って……さしずめ『犬のお巡りさん』ね?」
    「なんだと……?」
     怒気をはらんだアレクサンドラの声に怯む様子もなく、ラプラスは玉座の手摺りに腰掛け、そのままアウグストの肩にしなだれ掛かろうと身体を傾ける。
    「――――ラプラス」
    「……わかったわよ」
     拗ねたような声を出してラプラスが立ち上がる。それからじっと玉座に座る者の顔を見下ろすと、抑揚のない声で呟いた。
    「――あなたも冗談が通じなくなっちゃったみたいね」
    「……?」
     階段の下にいたアレクサンドラにはその言葉が聞き取れなかった。直後、嫣然と微笑んだラプラスはいつものような甘い声で言う。
    「いつだったかは人のこと化けもの呼ばわりしてたけど、今のアウグストちゃんの方がよっぽど人の生気を吸って生きてそうよねぇ?」
     その言葉に、それまで微動だにしなかったバスチアンが口を開く。
    「ラプラスの言うように、少し顔色が悪いように見える。疲れがあるのではないか?」
     身分が変わっても態度が変わらないのはバスチアンも同じだが、その言葉が紛れもなくアウグストを気遣う想いから発せられたものだと感じたアレクサンドラはそれを咎めなかった。
    「確かに、少し気を張りすぎているんじゃない……でしょうか。午後の会議までお休みになられては……?」
     それを聞いたアウグストは僅かに口の端に笑みを浮かべた。
    「お気遣いありがとうございます。では、お言葉に甘えるとしましょう」
     アウグストが玉座から立ち上がり歩き出すと、アレクサンドラは意を決したようにきっと顔を上げた。
    「め、迷惑でなければ!何か寝つきが良くなるものを、部屋に届けさせよう……かと思うのですが……」
     一言目の大きさとは裏腹に、アレクサンドラの声はどんどん小さくなっていった。その居た堪れなさそうな表情を見下ろした皇帝は、小さく吹き出すように息を吐いた。
    「……ええ、お願いします」
     それは近頃の彼からは聴くことのなかった人の体温が感じられる声音だった。
    「ああ……任せてくれ」
     アレクサンドラの口から出たのは、肩を並べて戦場に出ていた時のような、ごく自然な返事だった。見上げた主君の表情がかつての友と同じに見えて、外の光など入らぬはずの謁見の間に朝の光がさしたような気がした。
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    k_tar0ta

    DONE8月6日はレオミシェの日にすると1年前から決めていました。
    テーマは「初めて一緒にマーボーカレーを食べるレオミシェ」です。
    後日きちんと手直しして画像にしようと思いますが、取り急ぎおめでとうございます!
    飴色には未だ早い「ここにいたんだな、ミシェル」
     背後から声が掛かり、キッチンに立つミシェルはドアの方を振り返る。声の主は抱えた荷物を下ろして肩を回しながらすぐ傍まで歩み寄って来た。
    「お疲れ様、レオくん。荷物運んでくれてありがとう」
    「気にすんなって。これでまた俺の気高さ値がアップしたからな」
     思っていた通りの返答にミシェルが思わずくすりと笑みを零すと、レオは少し照れくさそうに頬を掻く。
    「子ども達は昼寝してんだっけ?」
    「うん。小さい子達は夜の天体観測まで起きてられるようお昼寝で、大きい子達はまだ川で遊びたいって。今は養護院の先生達が見てくれてるよ」
     レオとミシェルの二人はシルヴェーアにある養護院で子ども達の夏のキャンプを護衛する任務に就いていた。朝から森を散策して、昼は川で遊んで、夜は天体観測。それから庭にテントを張ってみんなで眠る。それだけのささやかな催しだが、夏の恒例行事として子ども達は毎年とても楽しみにしているらしい。
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