春の嵐が告げる(雷コウ) 厚手のコートを羽織っていても身をすくめて歩かねばならないほどの寒さはこの頃めっきり少なくなった。特に今日は風は冷たいとは言え降り注ぐ日光が温かい。ずっと必需品だった手袋を置いてコウは福岡から広島の地へと飛び出した。歩く街のあちこちで春の匂いがする。
柔らかな陽の光を浴びながら辿り着いた広島本部の会議室。会議開始時間ギリギリにたどり着いたものだからそこには残りのHEADが三人そろっていると思っていたのに人影は一つしかい。窓際の一際日の当たる席に机に突っ伏すようにして眠っていた金色の頭がドアの開いた音に反応をして顔を上げる。
男は寝起きのぼんやりとした表情のまま眉を寄せる。この男が自分を嫌っているのは知っているがそこまで露骨に態度を変えなくてもいいのでは、とは思うもののこのわかりやすさは実はそこまで嫌いではない。他の人たちは、と聞くよりも先に男が眠そうに口を開いた。
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