The end of the adventureまず地上の人間を。
次に魔界の魔族と竜族を。
冥竜王ヴェルザーは魔界の一番大きくて深い溶岩溜まりに放りこんだ。
雷竜ボルクスは竜魔人になって引き裂いた。
それから取り零しを探しにもう一度地上へ。
丁寧に丁寧に、大陸という大陸の端から端まで人間を、モンスターを、魔族をすり潰していく。
デルムリン島は大切な友達がいた所だから、苦しめないようにドルオーラで消し飛ばした。
昔の仲間が話し合おうと近寄ってきたから、俺と刺し違えるための武器を握り潰してから消した。
あれから何日たっただろう。
何度も世界中を飛び回って消していくだけの日々は俺から時間の感覚を奪っていた。
これをはじめた頃は精霊の奴らが五月蝿かったが今はもう何も言ってこない。
やっと世界が静かになったから、久しぶりにここへきた。
俺の剣があった所。
あいつがどうして俺にとって世界は優しくないんだと泣いた所。
あいつが俺をかばって死んだ所。
俺がはじめて人を殺した所。
俺があいつを葬った所。
一面花畑の中で、そこだけ土がむき出しになっていたのに。
今はまた花で埋めつくされていた。
俺はあいつの上に大の字に寝転がった。
花と土を通してもあいつの温もりを感じてほっとする。
「こんな事を彼は望んでいないわ」
「彼を悲しませるのはやめろ」
「お前は心まで魔獣になったのか!」
「貴様の行いを奴の前で言えるのか?」
「貴方は一体何をしたいんですか?」
風にのって届くのは幻聴。
だってそれを言った奴はとっくに俺が消したから。
どいつもこいつも、あいつの事をちっともわかってない。
あいつは、俺に対して滅法甘いんだ。
俺が誰でも、バケモノでも友達だって。
最後の最後までつきあってやるって言って、本当にそうしてくれた親友なんだ。
だから俺はこの賭けに勝てると確信している。
寝転がったまま俺の剣を抜き、喉笛を一文字にかき斬った。
痛みはすぐに熱さに変わり、呼吸の代わりにゴボゴボという音に変わった。
そして……俺が剣を投げ出した所に人影が見えた。
若草色の旅人の服を着て、山吹色のバンダナをしているあいつがいつものように両手をひろげて、飛び込んできた俺を思い切り抱きしめる。
「随分遅かったな、待ちくたびれたぜ」
「ごめん。しなくちゃいけないことがあったんだ」
俺は何をしたんだっけ?
俺という竜が護ろうとした、たった一つの宝物を奪ったこの世界に復讐を。
こいつの望み、「世界を俺に優しくする」為に。
「人も竜も魔族も、みんないなければ争いもおきない」
そう、俺は最後の竜の騎士として使命を果たしただけ。
三界は永遠に平和になった。
神だろうと文句は言わせない。
「こんな真似をして、彼にどんな顔をして会うつもりですか?」
先生、賭けはやっぱり俺の勝ちだ。
ポップは笑って俺を迎えてくれた。
そして俺と肩を抱きあい歩きだす。
《少年は生涯の友と出合い、喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、その冒険すべてを分かち合いました》
だからデルムリン島からはじまった俺とポップの冒険はここで終わる。
〜The end of the adventure〜
「次は何をしようか?」
「お前とだったら何でもできるさ」
そして俺とポップの新しい冒険はこれからはじまる。