静かな場所まで連れてって『明日一緒にドライブへ出かけませんか』
盆暮れ正月も碌に実家に顔を見せない双子の兄からメッセージが届いた夜更け頃。唐突な連絡に驚きつつも断る理由も無い為仕事終わりで良かったらと返事を送り職場近くにある駐車場の情報を送る。
(兄貴、車買ったんだ)
明日の支度を整えつつ一斗はぼんやりと思いを巡らせる。兄貴こと目金欠流は一斗にとって真逆の在り方で生きる嵐のような人物である。留まることを知らずただひたすらに前を見つめて歩み続ける、自身にとっての『楽しい』に貪欲な人である。学生だった頃はそんな兄貴に付いて行こうと必死にあがいていた時期もあったが、変化を恐れ立ち竦んでしまう一斗と常に楽しい事を追求し続ける兄貴とでは歩調が合う訳も無く、何時しか兄貴の背中を無理に追おうとせず遠くで眺める様になっていた。
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