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    きんとき

    @kintoki800

    うさおちゃんがひたすらかわいい。

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    きんとき

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    同棲同僚宇佐尾。
    お付き合い&同棲してから半年くらいの二人。
    バレンタインのはずが、ご飯メインになった気がする。

    #宇佐尾
    ushio

    家に帰ったら、残りを食べよう。「はい、今日の弁当」
    「ん、ありがとう」
     休み明けの月曜日。僕はいつものように百之助に弁当を渡す。
     一緒に暮らすようになってしばらくしてから、僕たちは会社に弁当を持ってくるようになった。
     月曜日と木曜日は僕が、火曜日と金曜日は百之助が弁当を作り、水曜日だけ外でランチをするのが基本のルーティン。弁当は作ったほうが二つとも会社に持ってくる。おかずはイチから作ることもあるけど、作り置きしたおかずだったり朝食や前の日の残り物だったりすることもしょっちゅうだ。
     もともとは二人ともランチを食べに出ていたけれど、ある日百之助が、「宇佐美が作った弁当が食べたい」なんてかわいいことを言って甘えたものだから弁当を作るようになり、最終的にこういう形に落ち着いた。始めてからそろそろ二ヶ月になる。
     昼食はたいてい休憩室へ来るけど、同じフロアの同僚たちはみんな外へ食べに出るから、今日も休憩室には二人しかいない。各フロアにある休憩室は、入ってすぐのところに会議机二つと椅子が四つ置かれている。その会議机の奥には二段上がって六畳の畳が敷いてある区画があり、そこには正方形の机が一つと机の周りを囲んで座布団が四つ置かれている。
     僕達は靴を脱いで畳に上がる。僕は入り口を背にして座り、百之助は僕の左隣に座る。これが定位置だ。
     バンダナをほどいて二段の弁当箱を取り出す。僕のはネコ、百之助のはウサギのワンポイントがついた弁当箱。これは弁当を作ることになったときにそもそも家には弁当箱が無くて、二人で買いに行ったものだ。
     百之助が弁当箱の下の段を開ける。入っているおかずは、ミニトマトとブロッコリーの豚肉炒めと、作り置きのかぼちゃときんぴらごぼう。今日は野菜が多めで、定番の玉子焼きは入れてない。
     続いて上の段を開けて中身を見た百之助は、蓋を持ったままきょとんとした顔をする。しばらく弁当箱に視線を注いだあと、呟きをもらす。
    「二色どんぶり……食べるのは給食以来だ」
    「えっ、そうなんだ」
     弁当のご飯の段をどんぶり形式にするのは今回が初めてだったから、それで驚いているのかと思った。
     今日のご飯の段は、とりそぼろとたまごそぼろの二色どんぶり。弁当箱の細長い長方形を、二色でさらに細長く分けている。今日は端っこに刻んださやえんどうも添えてある。
    「箸だと食べづらいから、今日はこれね」
    「お前、これ、」
    「そぼろの弁当のときはこれが一番食べやすいんだって」
     少し渋い顔をした百之助の言葉を遮って、フォークを手に押し付ける。
     僕が渡したフォークは、刃の部分が太短く先端が丸く処理されていて、持つ部分はチープな水色のプラスチックで太くなっているものだ。絵こそついてないものの、いわゆるお弁当用のフォークの中でも子供向きのもの。フォークの刃の間が狭いからそぼろがこぼれにくく、スプーンよりもおかずが食べやすいのである。学生時代に母が二色どんぶりの弁当を作ってくれたときは、いつもこれだった。
     百之助は受け取ったフォークを不満そうに見つめていたけどすぐに諦め、いただきますと呟いてそぼろとごはんにフォークを刺した。
    「うまい」
    「そりゃよかった」
     百之助はもくもくと二色どんぶりを食べていく。
     次に作るときは、とりとたまごをハート型にしてあげよっと。そんなイタズラを考えながら、そぼろを頬張っていく百之助を見つめる。
    「百之助、おかずの存在忘れてない?」
    「あっ」
     そう言った瞬間、百之助はぽろりとそぼろをこぼした。
    「あーあ、やっぱりこぼした。ほら」
     僕は箸を出して、バンダナの上に落ちたそぼろをつまみ、百之助の口に運ぶ。百之助は条件反射でそれをついばむ。
    「気に入ってもらえてよかったよ。多めに作って冷蔵庫に入れてあるから、明日の夕飯に食べようね」
    「ん」
     短い返事だけれど、それでも喜んでいるのがわかる。
     下段のおかずにうつろうとした百之助が、ふとこちらの弁当箱を見る。
    「宇佐美は、食べないのか?」
    「あ。百之助がお子様フォークでそぼろつっついてるのがかわいくてすっかり忘れてた」
    「なんだそれ……」
    「ふふ、いただきます」
     照れる百之助を横目で見ながら、僕は箸でそぼろを食べ始める。
    「って、お前はフォークじゃないのかよ」
    「そういう形のフォークはそれしかうちになかったから。今度おそろいを買いに行こうか。……まぁ、僕は百之助と違って箸でもこぼさないけどね。今日はまたこぼしてもあーんしてあげられるよ」
    「も、もうこぼさねぇよ」
    「どーだか」
     そんなことを言い合いながら、二人で胃と心を満たしていく。

    「ふう。ごちそうさま」
     食べ始めたのが遅かった僕は、百之助から少し遅れて弁当を食べ終えた。僕がバンダナで弁当箱を包み始めると、百之助も広げたままだった弁当箱を片付け始める。
    「百之助は午後も内勤だったよね?」
    「ああ。宇佐美は外回りだろ。直帰するのか?」
    「うん、そのつもり。夕飯もいらないよ。あそこの担当者は話が長いから、遅くなるかもなぁ」
    「わかった」
     百之助の弁当箱を受け取り、自分のものと重ねて袋に戻す。そして、袋の中に入れてあった小さな赤い箱を取り出す。
    「だからこれは先に渡しとこっかな。はい」
     目の前に突き出された赤い包みに、百之助は目を丸くしている。僕は満面の笑みで、
    「ハッピーバレンタイン~」
    と告げてやる。
     男所帯でバレンタインのバの字もない職場だから、今日がバレンタインだなんてすっかり忘れていたんだろう。百之助はバレンタインだと言われても頭が追いついていないようだ。もしかしたら、チョコを用意してなくて頭が真っ白になっているのかもしれない。
     百之助が受け取らずに固まったままなので、僕は赤い包みを自分の前に置いて、勝手に包装紙をはがし始める。
    「ま、実際のところは自分が高級チョコを食べたくなっただけなんだよね。バレンタインのチョコって特別なのがいっぱいあるから。だから半分ずつだよ」
     先週一人で帰ったときに百貨店の前ののぼりを見かけて、バレンタインに百之助とチョコを食べるのもいいな、と思って百貨店に入った。バレンタイン商戦真っただ中の百貨店の催事場は、女性客でごった返す中に男性客もちらほらといた。かわいいのもおもしろいかと思ったけど味重視にして、誰もが知っている有名ブランドの、小さな箱のくせに千円以上するものを買ってみた。……値段は黙っておこうと思う。
     蓋を開けると、色味の違う四つのトリュフチョコが一列に並んでいる。端はホワイトチョコとビターチョコ。そしてその間がグラデーションになるよう、ミルクチョコの色の薄いものと濃いものが一つずつだ。色が違う以外は見た目はどれも同じだけど、それぞれ違うフルーツフレーバーが使ってあるらしい。
    「どれ食べてもいいよ。フレーバーが違うらしいから、何味か教えてね」
     そう言って僕は百之助の前に箱を置いてやる。しかし、百之助は少し気まずそうな顔をした。
    「悪い、さっきガム食い始めちまった……」
     百之助の返答に、今度は僕が虚を突かれた。僕としたことが、百之助がいつも食後にガムを食べることを忘れていた。自分のほうが食べ終えるのが遅かったために、百之助がガムを口に入れたのにも気がついてなかったのだ。
    「すまん。家で食べてもいいか?」
    「うん。でも先に一個食べちゃうね」
    「ああ、もちろん」
    「せーっかく、百之助とバレンタインしようと思ったのにな~」
     僕はわざとらしく口を尖らせてみせながらチョコを選ぶ。僕も百之助も甘いものは好きだけど、百之助はチョコだとビター寄りのものを好んでいる。だから僕はホワイトチョコを口に運んだ。
     丸いチョコを口の中で転がして端をひと噛みすると、噛んだところがすぐに溶け出す。チョコとオレンジフレーバーの香りが口の中に広がっていく。
     百之助がガムで口を動かしながら聞いてくる。
    「普通のチョコに見えるが、何味なんだ?」
    「これはオレンジフレーバーだね。ホワイトチョコだけどオレンジの苦みも少しあるから、これなら……」
     百之助も好みかも、と言いかけて、僕は左腕を百之助の首に回して、ぐいと引き寄せる。
    「なっ、」
    「味が気になるんでしょ。おすそ分けしてあげるよ」
     百之助の頬に右手を添えて、唇を重ねる。
    「んぅっ、うさ、」
     不意打ちの口づけに開いたままの唇から、そのまま舌を進める。チョコのオレンジフレーバーと、ガムのミントの香りが、二人の口内で混ざり合う。
     舌をくるりと一周絡めると、僕の舌先にガムが当たる。口づけを深くして舌でガムを絡めとり、自分の口にまだ半分残っているチョコを、百之助の口内に押し入れてやる。チョコとガムを互いの舌で挟んですり合わせると、二人の熱でチョコがどろりと溶け、ホワイトチョコの強い甘さが広がる。溶けたチョコの油脂で、舌の間のガムはじゅわりと小さくなっていく。
     しばらく舌を絡ませていたら、チョコもガムもすっかり溶けてしまう。それでもなお甘さが残るせいか、互いにいつもより唾液が多い。ちゅぱ、ちゅぱ、と大きな音が、静かな室内に響く。
     百之助の口の端から唾液がこぼれて右手に垂れてきたのを感じ、僕はやっと唇を離す。二人の唇から糸が引き、ふつりと切れて百之助の下唇についた。
     百之助は途中から縋るように僕のジャケットの前をつかんでいて、キスを終えてもその手を離さずホワイトチョコの混ざった唾液を口の周りに付けたままで陶然としている。視線を落とすと、脚の付け根でズボンが押し上がっていて、中が苦しそうだ。
    「おいしかった?」
     髪を撫でてあげながら問いかけると、百之助はやっと気がつき、潤んだ目で僕を睨む。
    「うさ、おま…かいしゃ、ガム、ここ……ッ」
    「だって百之助ってば、僕のチョコよりガムを優先したくせに、チョコも食べたいってわがまま言ったじゃん」
    「そういうわけじゃ……あッ」
     百之助の勃ち上がったそれを、ズボンの上から軽く撫でてやる。僕はニコリと笑って、そこを撫でながら百之助の耳元で囁く。
    「これはトイレに行って自分で抜いておいで。僕がしてあげたいけど……会社、だもんね?」
    「う、宇佐美……」
     キスだけでこんなになっちゃうなんて、会社だから興奮しちゃったのかな。それとも、チョコの媚薬効果ってやつ? ホワイトチョコにも媚薬効果ってあるのかな。
     顔をくしゃくしゃにして目を潤ませている百之助は、口の周りに白く濁った唾液をつけたままだ。それがまるで、夜に口でしてくれた後のようで……自分も下腹が熱くなるのを感じる。
     ──まだ食べ足りないなぁ。
     僕は深く息をはいてから、百之助の唇についたものをぺろりと舐めとる。甘い。頬にもキスを落として、百之助から手を離す。

     今日は早く帰れますように。
     家に帰ったら、残りを食べよう。
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