甘いのはどっち?大きな口を開き、ガブリとシュークリームに食らいつく。
噛り付いた反対側から飛び出してきたクリームに舌打ちをしながらも、広がるカスタードの風味に、思わず口元が綻ぶ姿を三ツ谷は見逃さなかった。
妹たちが友人のプレゼントにケーキやマカロンを作ってあげると大騒ぎし、仕方なく手伝っている間にあれよあれよと様々な菓子を作り出してしまった結果ではあるが、こんなに喜んでくれるなら作ってよかったなぁと改めて感じる。
向いに座り、缶ジュースを飲みながら、瞳を逸らすことなく大寿を見続ける三ツ谷を尻目 に、大寿は次の菓子を吟味し始めている様子だった。
目を付けたフルーツサンドを手に取る前に、大寿は指の間についてしまったクリームを舌で舐めとった。
指の間から覗く、熟れたリンゴのような赤色が昨晩の淫行を思い出させ、三ツ谷は思わず 声が出てしまった。
「おっとぉ...」
「あ」
ドスの聞いた低い声と虎のような鋭い目が三ツ谷をとらえる。
大寿も勘のいいところがある故に、おそらく三ツ谷の表情からとんでもない事を思い出されている事に気付いたのであろう。
明らかに機嫌が悪くなっていく大寿に、三ツ谷は諦めて率直に話すことを選んだ。
「いや、健全な中学生男子だからさ。許してくれない大寿君」
「うぜぇ」
「はは…それより、そのフルーツサンドどう?果物入れすぎちゃったんだけど」
大寿は三ツ谷の顔を暫くじっと見つめた後、諦めたのかフルーツサンドに噛り付く。
相変わらず上手に食べられないようだが、味はお気に召したのであろう。大寿の周りに渦巻いていた黒い霧がさっと晴れていった。
「うめぇ」
「ん。それはよかった」
引き続き豪快に行われる大寿の食事を三ツ谷がニコニコしながら見つめていると、ぼそりと大寿が呟いた。
あまりに小さい声のため聞き取ることができず、三ツ谷が首をかしげていると、最後のフルーツサンドを頬張り終え、口元にクリームをつけたままの大寿が立ち上がった。
「想像で満足か」
「え」
「イイもんもらったからには、ちゃんと礼しねぇとなぁ」
椅子を足で仕舞った大寿は、三ツ谷にドカドカと近づき、胸ぐらを掴んで持ち上げる。突 然の出来事に思わず身構えた三ツ谷だったが、想像していた岩のような拳は降ってこず、その代わりに、まるで先ほどまで頬張っていた菓子に食らいつくように口付けをされた。
乱暴だが段々深くなる口づけに喜びを隠すこともできず、思わず大寿の頭を引き寄せ舌を絡めると、堪えきれなかったか細い吐息を吐いた後、ベリベリと無理やり引きはがされてしまった。
「さかってんじゃねぇよ」
「ごめんごめん。嬉しくてつい」
にこりと笑いかけると目を逸らされてしまったが、ぐいと手を引かれるそのままに大寿についていくと、どさりとベッドに放り投げられた。
驚きと、それを上回る期待に目がギラつく三ツ谷に、「ははっ」と嘲るように大寿は笑う と、三ツ谷の上に嬉しそうに跨った。