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    palco_WT

    @tsunapal

    ぱるこさんだよー
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    palco_WT

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    弓場(高3)×神田(高2)

    陽の当たる場所 神田くん、と女性の声に肩を揺らされ、目を覚ました。一瞬だけ状況が分からず、大して似ていないその声を母親のものだと勘違いしかけたのは、よほど眠りに溺れていたのだろう。
     授業中じゃないのだけは良かった、と昼食をさっさと平らげて、教室の机で腕を枕に午睡と決め込んだ神田は、まだまつわりつく眠気を払うように大きく伸びをして、起こしてくれたクラスメイトへと顔を向けた。
    「もう予鈴鳴った? 気づかなかったわ、助かった」
    「ううん、違う。先輩来てるよ」
    「先輩?」
     彼女が見やった視線の先を神田の柔和なまなざしが追う。下級生とはいえ、自分のクラス以外の教室に気安く入るつもりはないのか、扉の向こうにその人はいた。
    「弓場……先輩」
     おう、とボーダーでは隊長であり、高校ここでは一学年先輩でもある青年は神田に向かって軽く手を上げた。もうひとつ、余人は知らないことではあるが、神田にとっては別の顔を持つ存在でもある弓場の元へと駆け寄りたくなる気持ちを、そうさせる気持ちを微塵も周囲へと見せないように、しかし待たせることを良しとはしないことを訴えるような絶妙な足取りへと近づいた。
    「どうしたんですか、二年うちの教室までわざわざ」
    「少し週末のことで確認してェーことがあってな。おまえはちゃんとしてるから、どうせ私物の携帯端末は預けてあんだろ」
    「でも本部ボーダーのほうの端末は携行許可を取ってますから、ここに」
     と胸ポケットから引き出そうとするが、弓場の手のひらがそれを抑える。
    「ついでもあったからな」
    「ついで?」
     ああ、と頷き、弓場は声を低めて、神田の鼓膜にだけ届くほどの音量で告げた。
    「時間が取れそうだったら、今夜どうだって話さ」
    (あ……)
     初めてというわけでもないのに、弓場からの誘いは未だに神田の胸を逸らせた。
    「……そういうのは、それこそ下校したあたりにメッセージアプリででも訊いてくれてもいいのに、わざわざ三年の教室から来なくても」
    「三門と九州ほど離れてるわけでもねェーんだ、近ェもんだろ。生身でもちったァ歩かねェ―とな」
     弓場は神田の卒業後の進路を知る数少ないうちのひとりでもあった。まだチームメイトの王子や蔵内、藤丸にも打ち明けてはいないことだった。
    「それに、そんなメッセージひとつで確かめるってのも味気ねェーだろ」
    「意外とロマンチックですね、弓場さん」
    「閨事くれェーにはちっとは情緒はいるだろって話だ。で、どうする」
    「いいですよ。弓場さんは今日は隊長会議があるんでしょ、部屋で待ってます」
     隊長のスケジュールをきっちりと心得ている副官に、B級上位チームの長である男は満足そうに、引き結んだ唇のはじをかすかに上げてみせた。
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    水鳥の

    MOURNING初のイコプリSS。大半が十九歳。関西弁は空気で読んでください。 付き合ってからと言うもの、王子は事あるごとに生駒に好きを伝えたがる。
    「好きだよ、イコさん」
     時も場所関係なく伝えられる言葉に、生駒は不思議そうに尋ねたことがある。
    「なんや、王子、どないしたん?」
    「うーん、何でもないよ。ただ言いたいだけ」
    「それなら、ええ」
     にこにこといつもと変わらない笑顔を張り付けて、王子は生駒に言う。生駒は、本当にそうなら問題ないな、と頷いた。
     
    「で、今も続いてる、と」
     生駒から経緯を聞いていた弓場は、片眉を器用に持ち上げて嫌そうな表情をした。
    「そうや」
     生駒はいつもと変わらない表情で弓場の問いに答えた。
     日差しの気持ちよい午後、ボーダーのラウンジの一角に何故か十九歳組が集まり、何故か近況はどうなのかと言う事になり、何故か、王子と付き合っている生駒の悩み相談が開始された。
    「王子も可愛いところあるじゃないか」
     嵐山が、どこが悩みなんだ? と不思議そうに言う。
    「いや、何回も続くと生駒も鬱陶しいんじゃないのか?」
     嵐山の問いに柿崎が答える。
    「いや、そんなんないな」
     生駒は、当たり前だと言うように柿崎の言葉を否定した。
    「ないのかよ」
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