元・裏垢男子の事情2壮五は手の中のスマートフォンを見つめながら、小さくため息をついた。送れど送れど返信はない。最初の頃は既読にはなっていたが、最近はメッセージを読んでくれてさえいない。
どうして自分はこうなのか、とまたため息をついてしまった。
欲しいと思うものは指の隙間からこぼれ落ちて掴めない。だが、環だけはどうしても、どんな手を使ってでも手に入れたいと思ってしまった。こうなったら、施設を買収してオーナーにでもなろうか、とさえ思ってしまった。
もし、次にメッセージを送っても返事がなかったら、直接会いに行こう。そう決意して画面を見つめると、ポコンッと間抜けな通知音がなり思わず目を見開いた。
『いつあいてる?』
待ち望んでいた環からの連絡に喜びを噛み締める訳でもなく、壮五は手早く『いまから行くね』と打ち込んだ。
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