渋谷怪事件簿─中─「日本画もいいが、西洋画にも興味があってね」
「西洋画か。それなら上野にある美術館がいいぞ。古典派から近代、現代の絵が揃っている。俺のオススメはゴッホの『ばら』だ」
「へぇ、ゴッホの絵があるのか」
生き生きとした様子で語る祐介に、男が紅茶を飲みつつ相槌を打つ。
2人の美少年の楽しげな会話を尻目に蚊帳の外となった竜司は、目の前の白いカップに注がれたコーヒーへ口をつける。
(なんでこんな事になったんだ…?)
親友の居候先である喫茶店のコーヒーとは違う味に違和感を抱きつつ、竜司はこれまでの出来事を思い返し始めた。
渋谷怪事件簿─中─
その日はいつもと変わらない放課後だった。
怪盗団の集まりも無くこれと言った用事のなかった竜司は、何の気なしに暁を誘って渋谷の街をブラブラしようと思い立った。
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