冨岡がそんな事を思っているとは露知らずにいる不死川はというと。
(……ぁ…っぶねェ…!!)
襖を閉め、その場にしゃがみこんでいた。
先程の衝撃の余韻がまだ抜けきらない。バクバクと煩い心臓を落ち着かせるようにギュッと握るが、なかなか静かになってはくれないようだ。
(なんだってあんな…)
寝起きすら色っぽいなんて聞いてねぇぞこら。八つ当たりのような、惚気のような、そんな悪態をついてしまう。
思い出すだけでもゴクリと喉が鳴る。先程、冨岡に聞かれなかっただろうか。少し心配だ。
いつもは一つにまとめられた長い髪は軽く乱れ、涼やかな目元はとろりと微睡んで甘さすら感じる。然程大きくない濃い桃色の唇が小さく開き、ゆったりと紡がれる声は微かに掠れ、やたら心臓に悪い。
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