命名ふらりと昼時の望舒旅館に現れ昼餉を共にしようと誘われれば断ることなどできるはずもなく、杏仁豆腐と閑雲から預かってきたという豆腐布顛というおよそ凡人の昼餉とは思えないものが目の前にある。対する鍾離の前には旅館特製の日替わり昼食が並んでいた。
それでも同席しているという喜びと緊張を飲み込んでいると、
「名付けを頼まれた」
不意に鍾離が話題を振ってきた。いつもことなので、一拍置いて続きを促すような視線を送る。いつものようにその視線に動揺が見えていることに鍾離はわずかに苦笑する。
「三杯酔で何度か同席したことがあるという程度の、所謂顔見知りだな。もうすぐ子どもが生まれるから、名前をつけて欲しいと頼まれたんだ」
博覧強記の往生堂の客卿としても広く知られている鍾離に肖りたいと願う凡人の気持ちはよく分かる。しかしその正体は魔神戦争を勝ち抜いた岩の魔神モラクスであり、璃月を築いた岩王帝君その人なのだ。
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