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    _aonof

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    POIPOI 57

    _aonof

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    ついでに私のループもの五夏五読んでほしい。

    「それはつまり……」
     言葉を途切れさせた夏油が、五条から目を離して口元を覆うように隠す。その視線はどこか空に向けられ、困惑したような気配がにじみ出ていた。
     夕暮れの教室は窓から差し込むオレンジ色の光に照らされて、影とのコントラストが徐々に強くなっている。放課後の教室に残ってくれと頼んで、椅子に座ったままの夏油を、五条は隣の席の椅子に座って唖然と見返していた。夏油の反応の意味が分からず、戸惑っていると、夏油は躊躇いがちに視線を五条に戻す。
    「君が私を好き、と言う話かい?」
     は? と全てを台無しにするような反応を、五条は本能的に抑え込んだ。
     おかしい。そういう話ではなかったと思っていた。夏油のことはどっちかと言われれば好きだが、そんな告白を受けているみたいな顔をされるような意味じゃない。確かに自分は夏油が何より大事で信頼していて出来ればずっと一緒に居たい、ということを一生懸命言ったが、それでもそういう意味ではなかった。いや、多分言い方を失敗した。
     じっと自分を見つめる夏油の瞳が、五条の真意を問うものであることに、ここで失敗は出来ないと五条は思う。ここで断って信頼を下げるよりも、肯定したほうが良いと五条は思った。
    「……ああ」
     頷いた五条に目を見張って、それから夏油は手を外すと、視線を床の方へ落とす。
    「……気付かなかったな」
    「あ、あー、いや、好きっつっても」、
    「私だけだと思ってた」
    「へ?」
     今度は目を見張ったのは五条の方だった。頬が少し赤くなり気恥ずかし気な笑みが小さく浮かんだ夏油は、確かに喜んでるようだった。その顔が自分を向き、しっかりと目を合わせてきたのに、五条は自分の顔が熱くなっているのを自覚する。いやだってそんな、親友、だったんじゃ……。
    「私も好きだよ、悟」
     言葉を失った五条に夏油は優しく微笑む。
    「君が良ければ付き合ってほしい。もちろん、君の言う通り、ずっと」
    「………………」
     呆然とする五条に、夏油は微笑んでいる。
    「思いもしなかった返事を返されたって顔だね」
    「う、るせえな。だってそうだろ……」
     本当に思いもしなかったというか、その考えはなかった、というのが五条の正直なところだが、でも、なんだか、確かな手ごたえを感じていた。だからその選択肢に手を伸ばさざるを得なかった。どうしても、夏油に離反してほしくないのだ。そのためなら、どんなことだって試すに決まっていた。
     二年生を初めから繰り返すこと二回目。前回は夏油の気持ちを汲み取ろうと努力しすぎて、亀裂を深めてしまった。その記憶もひどく五条を叩きのめしているので、今の夏油の表情が、ひどく救いに思えたのだ。
     そう。救いを求めているのは自分だ。
     夏油を救いたい、なんて言い方は、間違っても出来ないと今の五条は思っている。それは大切な親友の、大きな選択だったのだから。たとえ、倫理にも正義にも、友情にも反していようと。
    「……君がそんなに真剣に、口説いて来るとは思わなかった」
     思わぬ展開に混乱して、それを表に出さないために精一杯の五条は、かろうじて返事をする。
    「どういう意味だよ」
    「君は一生懸命になることがダサいと思ってるだろ? だから意外だったんだよ」
    「……悪いかよ」
     五条の拗ねたような声音に、夏油は机に頬杖をつく。
    「いや、そんなことない。君がそこまで私を好きだと思っていなかったからね」
    「…………」
    「嬉しいよ」
     黙り込んだ五条を夏油はのぞき込んでくる。あまりない夏油から距離を詰めてくる仕草に五条はどきりと顔を上げる。
    「気に障った? 悟」
    「別に…………」
     なんなんだよこの慣れた感じは。と思いながら五条はこれ以上はいたたまれない気がして、立ち上がる。
    「悟?」
    「寮に戻るわ」
    「送っていくよ」
     同じく立ち上がる夏油に送っていくってなんだよ。隣の部屋だろ。と思いながらも妙に先ほどから落ち着かなくて困惑する。意識しているのは分かっていたが、夏油相手に意識するのが癪で気づかないふりをした。
    「じゃあまた明日」
    「……おう」
     視線を合わせずに返事をして自室のドアを閉める。それから気配が去っていくのを眺め、ベッドに転がり、それからふと思う。
    「私も好きっつったか? 傑」
     改めて考えると、いつからかは知らないが、夏油は五条を好きだったという話になる。このループでそうなのか、それとも最初から夏油が自分を好きだったのかわからない。
     でも、好きだと口に出させたなら話は早い。好きなら離れていかないかも。と五条は考え、それからふと疑問に思った。
     付き合うって何すんだ?
     狭い囲われた五条の家で生きてきた五条がまともな感性の持ち主と出会えたのは、呪術高専に入ってからだ。それまでは五条自身が自分の家柄や容姿をみて付きまとってくる人間しかおらず、全て拒絶していた。そんな五条にとって、深い人付き合いをするのは、夏油や家入、そして夜蛾が初めてだった。
     つい携帯で調べてみて、それから五条はすぐにぱちりと閉じた。
    「いや、」
     ねえわ。と声に出そうになったのを抑える。キス、とか。と口に出せずに考えてそのまま両手で顔を覆った。経験がないわけじゃないが、夏油相手にと思うとひどく、なんというか、いたたまれなくなる。羞恥的な意味で。
     好きってことは俺としたいのか? 傑って。
     分からない。でもそんな感情を向けられているのは、自分も嫌ではなくてほっとした。もう付き合うことになってしまった。今更覆せない。
     こんなに一緒に居ても、良く分からないまま親友のことを思い、五条はそのまま目を閉じた。
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