三十八時間越しの月 スマホのアラームは随分と前に止めた。
季節性の下級吸血鬼が大量に徘徊しているとかで(季節性ってなんだ怖い)陽のあるうちにギルドへと出掛けたはずの若僧はまだ帰っては来ないだろう。本日の夜食はないから適当に食ってこいとRINEは入れた。既読が付いたかどうかも確認はしていないが、見ていないのならそれは自業自得というものだ。ジョンのついでに用意してやっているとはいえ、毎日ロナルド君の重たい夜食を作ってやる義理もない。まあ趣味だから苦ではないけども。
ジョンはいつもの時間に起き出した気配がしていた。しばらくヌーヌーと鳴いて棺桶にこつこつと爪を当てていたが、今は静かだ。事務所のほうにいるのかもしれない。お腹が空いてヴァミマにでも行ったのかも。ジョンの食事くらいは用意してあげたかったが、どうにも怠くて動けない。瞼も重く、すっかりと夜のはずだというのに覚醒できない。
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