Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    柚月@ydk452

    晶くん受け小説

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 33

    柚月@ydk452

    ☆quiet follow

    スノホワ晶♂SS
    海賊パロで力尽くで双子晶♂

    #スノウ
    snow
    #ホワイト
    white
    #スノホワ晶♂
    #スノ晶♂
    #ホワ晶♂

    鳥籠の天使「ホワイト…!本当に、本当にホワイトじゃ…!」
    「スノウ!」
     神殿での殺伐とした空気とは一転し、鏡写しのような双子が互いの再会を確かめ合っていた。晶のおかげでネロは世界のために犠牲になる事なく、スクアーマとして生きる人達も滅びを待つ運命から遠ざけられた。
     海軍の協力を得て海底から浮上した晶達は、照りつける陽射しに目を細めつつも、変わらぬ世界の姿に安堵する。息を呑んだ不穏な大渦は、今や見る影もない。薄桃色の銀波桜が隠すようにまた海を染め、神殿はまた深い海底へと消え去った。
    「あ、キャプテン!おい、ネロと晶もいるぞー!」
    「おおおおお!!」
     いち早く晶達を引き上げたブラッドリーの部下達は、すぐさま歓声を上げる。自らの意思とは言え消息を絶ったネロと、海に飛び込んだ晶達が生きて戻ってきたのだ。海賊を生業とする彼らにとって、死は身近な存在であるためか、余計に喜びを感じるのだろう。
     そんな最中、浮かれる海賊達の輪の外で、生き別れていた双子の兄妹―スノウとホワイトは、互いをひしと抱きしめていた。不老のギフトである彼らの実年齢は、おそらく晶よりも上だろうが、その姿は微笑ましいの一言に尽きる。長らく欠けていたものが、今再び満ち足りたのだ。その喜びはきっと、晶の想像以上のものだろう。
     そうして二人を見ていた晶だったが、ふと揃いの金の瞳と重なった。
    「こうして縁を紡げたのも、彗星の天使であるそなたのおかげじゃ。」
    「お主を中心にして、世界の運命が変わった。交わる事が出来なかった我らもまた然り。この礼はどう返そうかのう?」
     小首を傾げて、二人は晶にそう問いかける。
    「え⁉︎そんな、お礼される程の事なんかしてません。二人がまた再会できたのは、きっと必然だったと思います。」
    「ほほほ、謙遜も行き過ぎると嫌味になってしまうぞ?そなたはもっと自分の事を誇るが良い。」
    「そうじゃなぁ、手始めに。」
     可愛らしい双子は、するりと晶の両手を絡めとる。
     海賊達の歓声は今や耳に入らない。ホワイトの帰りを待つ海軍は、じれったそうにこちらを見ている。そうした喧騒を横に、右からスノウが、左からホワイトが晶を見上げた。
    「海賊の我と」
    「海軍の我」
    『どっちが晶の好みなんじゃ?』
    「へぁ⁉︎」
     唐突な申し出に、晶が目を回したのは言うまでもない。

     ♢

    「あのですね。」
    「はい、あーん。」
    「だから、その。」
    「こっちも美味しいぞ。あーん。」
    「ん!美味しい!」
     思わずと言った様子で、晶は口を押さえた。両側からスノウとホワイトによって交互に食べさせられ、羞恥心が極限にまで増大しているが、料理の美味しさには敵うはずもない。今日は確かネロが全部作ったと言っていた。前はスープだけだったが、旅を続けるうちに各地で手に入れた貴重な食材や調味料が彼の好奇心を刺激し、今やフルコースを作れるまでに至っている。そんな彼が腕を振るっているのだから、船内はもはや宴会場と化していた。
     ちなみにホワイトは海軍を辞めて、ちゃっかりブラッドリーの海賊船に乗り込んでいる。もともと海軍には全く未練がなく、スノウと一緒ならば何処でもいいらしい。またもや居候が増えたにも関わらず素直に認められたのは、彼が持つ海軍の情報やネットワークを手土産にブラッドリーと交渉していたからだ。海軍の今後が危ぶまれるが、ブラッドリーならば上手く活用するだろう。
    「…やや、今日は満月だったか。」
    「それはうっかりしていたのう。」
     黄昏時を超えて、銀波桜の舞う海面にはいつしか夜の影が忍び寄っていた。遠い境界線上の彼方には、薄く大きな月が顔を覗かせている。2人につられて窓から外を見た晶だったが、水面の桜と夜空の月という幻想的な光景よりも双子の様子が気になった。
    「満月だと、何かあるんですか?」
     そう言えば前回の満月では、何処かの港に船を寄せ、船上でパーティーをしていたが、その時二人は席を外していた事を思い出す。ブラッドリーに聞いても、「気にすんな。朝には戻ってくるだろ。」とややぶっきらぼうに返された。事実その通り、何事もなかったかのように二人は揃って、船上で伸びていた乗組員を順番に叩き起こしていたものだから、晶もそれ以上は詮索しなかったのだ。
     晶の問いかけに、スノウとホワイトは揃って互いを見た。
    「ふむ、ちょうど良い頃合いかもしれんのう。」
    「晶や、今晩は空けておいてくれるかのう?」
    「え、今日の夜ですか?分かりました。」
    「やったー!今日は晶ちゃんを独り占めならぬ二人占めじゃ!」
    「誰にも告げてはならんぞ?我らだけの、夜の時間じゃ。」
     すぐに答えを言わない所からして、何か秘密めいた事を打ち明けられるのだろうか。それほど短くない時間を過ごしたことあり、晶は二人を疑うことすらなく快諾する。
     それを奥から、ブラッドリーが顔を顰めて見ていた。

     ♢

    「いいか、晶。ちょっと顔貸せ。」
    「キャプテン?どうかしましたか?」
     とっぷりと日も暮れて、夕食後に甲板で片付けをしていた晶を、ブラッドリーは呼び止めた。真面目で丁寧な仕事ぶりで評判の晶は、掃除や洗濯といった、何かを綺麗にする行為が性に合うらしく、乗組員から頼りにされている。荷物の整理を終えた今、残っているのは晶だけだった。
    「あのな、お前はあの双子の事が好きか?」
    「へ?な、何ですか、急に…?」
     唐突な質問に、面食らう。冗談かと思いきや、ブラッドリーの目には晶を茶化している様子はない。波の音が追い討ちをかけるかのように、背後から響き渡る。
    「好きか嫌いかと言われたら、好きですけど…。」
    「それはどの好きだ?恋愛としてか、ダチの類のものか?」
    「恋愛⁉︎それは俺、逮捕されますよ!」
    「ばかか。あいつらはお前の思う以上に年寄りだぞ。見た目に惑わされるな。それにそんくらいで逮捕されるんなら、海賊やってる俺たちはどうなるんだよ。」
     後半はやや笑みも含んでいるが、ブラッドリーは至って真剣な様子だった。真正面からそう告げられ、晶は動揺を隠せない。スノウとホワイトに対する気持ちは、確かに好意ではあるけれど、それが何なのかはまだ定まっていない。ふわふわと曖昧で、容易に形を変えてしまうそれは、晶もまた持て余していた。
     だからこそ、この満月の晩に二人の秘密めいた事に触れる許可を得られて、嬉しく思っていた。
     ―この『好き』は、なんだろう。
     一度抱いた疑問は、消える事なく胸に巣食う。今までしっかり歩いていたのに、途端に足場を失ってしまったかのような、不安と恐れが顔を出す。
     暗い表情になった晶を見て、ブラッドリーは苛立ったように舌打ちした。
    「あのな、先に言っておくが―」
    「晶ちゃん、みーっけ!」
    「もう、全然来ないから探し回っちゃったー!』
     物陰から素早く飛び出した二つの影が、晶を取り囲む。びったり寄り添ったスノウとホワイトは、甘えるように見上げた。
     双子の登場に、ブラッドリーは再び舌打ちする。
    「チッ、興が削がれたぜ…。」
    「キャプテン早く戻ったらー?」
    「言われなくてもそうするに決まってんだろ。」
    「あ、あの部屋使って良いよね?」
    「…好きにしろ。部下にも言ってある。」
    『さっすがキャプテン!』
     きゃっきゃっと朗らかに笑うスノウとホワイトを尻目に、ブラッドリーは帰ろうとしたが、その間際に振り返る。
    「晶。どうしても嫌なら大声を出せ。どうせ今晩は別件で、俺は起きてるからな。」
    「え…?」
    晶の疑問に応える事なく、今度こそブラッドリーは手を振って立ち去った。後に残るは、夜に響く波の音だけ。煌々と輝く満月が、甲板を照らしていく。
    「さて、それでは行こうかの。」
    「我らだけの、泡沫の夢じゃ。」
     闇夜の中で揃いの金が瞬き、遂には囚われて招かれた。



     船内の奥、そのまた奥に、小さな部屋があった。窓から僅かに溢れる月の光は、闇を照らすまでには至らない。後ろ手に扉を閉められると、ふわりと夜の気配がまた増した。
    「スノウ、ホワイト?どうしてこんなところに…えっ?」
     振り返って、驚いた。
     小さな可愛らしい双子の姿はどこにもない。
     代わりに、柔らかな物腰の美青年が二人佇んでいた。
     ちょうどその時、雲に隠れていた満月の光が部屋に差し込む。淡い光に満たされて、見るものを惹きつけてやまない。思考すら放棄させるほどの美しさに、思わず溜息が溢れてしまう。
     動きを止めた晶の様子を見て、二人は揃ってくすりと笑いを溢した。
    「とても良い反応で、嬉しいのう。」
    「どうじゃ?晶。この姿ならば、そなたも文句はないじゃろう。」
    「えっと…スノウと…ホワイトですか…?」
     恐る恐るそう問いかけた晶に、二人は是と返す。
    「我らには不老のギフトがあると言ったじゃろう?普段は子供の姿のままじゃが、やはり何処かで外と身体の時間にズレが生じるせいか、満月の夜にはこうして大人の姿になるんじゃ。」
     「ちなみに服は海軍の秘匿技術で、自由に伸縮自在の素材に変えておる!時間に関しては、かなりまちまちなのが難点じゃな。」
     理解が追いつかないほどの驚きと、情報量の多さに混乱してしまいそうだ。目の前にいる大人の二人は、スノウとホワイトで。つい先程まで可愛がっていた彼らと同じはずなのに、纏う雰囲気は間違いなく大人のそれだ。
     絡め取られた両手は熱を持っていそうで、思わず腰が引けそうになった。バランスを崩そうにも、すかさずスノウが後ろに回り、抱えられる。繋がれた手を持ち上げられた時には、既にそれはホワイトの口元に触れていた。
    「この姿でなければ、出来ない事があるじゃろう?」
    「今宵は存分に、付き合ってもらうとするかのう。」
     可愛さと色気の狭間で、もう後戻りは出来ないのだと悟る。この二人に囚われて、逃げることは許されない。
     天使の羽は、羽ばたく事を禁じられる。
     楽園という名の鳥籠に、捕まったのだから。
     
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works