27 アル空「眠そうだな、空」
「ん? んー……うん」
「おい、言ってるそばから船を漕ぐな」
「わかってる、そっちの瓶だよね……」
「……瓶? なんの話だ」
「……え、あ、ごめん。……夢の中でも実験の手伝いしてた……」
「実験……アルベドのか?」
「うん。最近は家でもやってて……いや、最近でもないか。割と前から家でも実験はしてたんだけど、その時間がだいぶ増えてるんだ。だから俺にも手伝えることあるか聞いたら、簡単なものを任せてもらって……そしたら、だんだんこっちも楽しくなってきちゃって。他にも出来ること増やしてもらったんだけど、気づいたらその、結構いい時間だったんだよね……」
「のめり込みすぎだろう……」
「んー、でも楽しかったし、アルベドも喜んでくれてたから俺としてはいいかなって。あとね、手際がいいねって褒めてもらったし、忙しいのはアルベドなのに糖分摂取のためにって美味しいスイーツも用意してくれたんだ。それになにより一緒にいられる時間が増えたから、余計舞い上がっちゃってさ」
「(惚気だな……)そうか。それは良かったな」
「うん! それで今日も手伝うよって言ったんだけど、今日はちゃんと寝なきゃだめって言われちゃってさぁ……平気だって何度押してもだめだった」
「実際眠そうにしているし、明らか睡眠不足に見えたからだろう。お前を気遣っての発言だ、アルベドが正しい」
「そうだけどー、わかってるけどさあ〜……」
「なにがそんなに不満なんだ。想われてる証拠だろう?」
「だってせっかく一緒にいられる理由ができたんだよ? なのに無理しないでいいって、……俺、べつに無理なんてしてないのに」
「お前にそのつもりがなくても、アルベドから見れば無理をさせたように映ったんだろう。あとはまあ、お前の睡眠時間を削ってまで実験に付き合わせたことを、反省してるのではないか? アルベドもお前と一緒で没頭してしまったのなら、もっと配分に気を使うべきだったと思ったのかもな」
「そんなの気にしなくていいのになあ」
「それがあいつの性格だろう。お前とそっくりだ」
「俺と? そうかな……あんまり意識してないけど」
「そういうところも似ている。……いや、似てきた、が正しいか」
「魈にはそう見えるの?」
「……まあ、そうだな。悪い意味ではなく。だから、というのもおかしいが、ひとまず今日のところはアルベドの言葉通りに過ごすことだ。何も実験の時間だけがお前たちのすべてではあるまい?」
「…………それもそっか。……ふあ〜、あー、やっぱりだめだ、ねむい〜」
「コーヒーとガムなら買ってきてやるぞ?」
「うう、ありがとう……でも申し訳ないから自分で行くよ」
「……はあ。なら我も行こう。そんな腑抜けた調子だと、階段から落ちかねないからな」