Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    soseki1_1

    @soseki1_1の進捗置き場 センシティブもある

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 73

    soseki1_1

    ☆quiet follow

    密かにデートの約束をする荘園初期傭占🤕🔮

    「物思いか」
     聞こえた声に、ふと意識が浮上する。思考に沈んでいたつもりはないが、随分とぼんやりしてしまったらしい。自覚しながら、イライは声の方へ振り替えることなく、口角だけを僅かに擡げた。この声が誰のものか、など、見ずとも理解できる。
    「どうかな」
    「或いは疲れか」
    「相変わらず試合に出れていないのに?」
    「その分色々聞いてやってるだろ。昨夜もそうだった」
     告げられた真実に瞬きをひとつ、ふたつ。視線を掲示板に向けたまま思考を整える。熱に浮かされた考えは、油断をするとすぐに飛び跳ねてしまう。しかしこれはどう跳ねようとも、堪えようとも真実だろう。
     昨夜、イライは仲間のトレイシーの愚痴を聞いてやっていた。自室に招く訳にはいかないため、談話室で。隣に立つ男の部屋と談話室まではそこそこの距離がある。わざわざ足を伸ばさなければ通り掛ることなど有りはしない。昨夜は酒盛りもしていなかった為、出歩く用向きなどないはずだ。それは、つまり……導き出される答えに、イライは口角がまたいっそう擡げられるのを止められない。
    「探してくれた?」
    「たまたま通りかかった」
    「そういうことにしておこうかな」
    「慈悲深い天眼様なことで」
     肩を竦めて息を吐く男の声を聴きながら、小さな笑みを零す。彼が人目のありかねない場所でらしいことを紡ぐのは稀だ。距離や態度には滲ませるが、言葉で示すことに関しては律している。今、エントランスに人目がないとはいえ、随分と寂しい思いをさせたらしい。昨夜だけでなく、ここ数日は狂宴ゲームこと試合の兼ね合いから、ふたりきりになることは難しかった。軍役経験があり、今も傭兵として生きている経歴から、そして試合の中の活躍から、荘園の生存者の誰からも頼られる男。そんな彼が見せる僅かな柔い部分を、自分だけが知っている。その事実は飽くことのない熱情を呼び覚ます。酷い程の優越感さえ身に覚えさせる酷い熱情だ。喉の奥まで這い上がるそれを笑みだけに留めながら、イライは掲示板を見続ける。今隣に目を落とせば、夜まで待てないと自覚していた。
    「ちなみに今夜、君の部屋の扉が叩かれるという噂があるのだけど」
    「……へえ、こんな偏屈な傭兵の部屋が?」
    「そう。しかも、来訪者はクラッカーとチーズ、それから生ハムも拵えるようだ。君のチャイティーさえあれば、完璧な夜の茶会ができるだろう」
    「ミルクとシナモンを多めに入れた、甘めのものにしておこう」
    「ご明察だ」
     言い終えて、イライは口元に小さな笑みを零す。踊るような心地に感けて、堪らず視線を隣へと下げる。薄汚れた若草色のフードを被る愛しい男は、未だ掲示板に目を向けたままだ。今このエントランスで、投げかけた目線が合うことはないだろう。人目を気にしているというよりも、場を弁えている人だ。ここが皆が使う場であることを踏まえているし、そういった姿勢をイライ自身好ましく思っている。ある程度は律していながらも、時折皆の前だろうとふいに近しくなる距離も。ふたりきりの部屋の中では熱を守ろうとするかのように隙間なく寄り添う様も。その全てを、愛おしいと。
     会話を終えると無言を楽しむこともなく、ナワーブは体を傾ける。そのまま去るかと思った彼は、仕舞いにイライの背を優しく撫でた。その瞬きの間だけを残して、小さくも大きな背中が扉へと消えていく。
    「ずるいなぁ」
     居住区へと続く扉が音を立てて閉じ切るまで、イライはその背を見詰めていた。寂しい無音を幾らか耳に入れてから、唇から思わずらしくもない独り言が零れ出す。目を隠す覆いは、赤らんだ頬の一部をも隠してくれるだろうか。誰もいないエントランスで、イライは気恥ずかしさに息を吐く。細やかな睦ぎ合いを見守り続けた相棒は、青年の肩に乗ったまま呆れた風に……そしてどこか嬉しそうに、鳴き声をひとつ零した。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏👏😍😭😭😭😭💖💖😭💖🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    soseki1_1

    DONEまーふぃーさんの赤塩FA
     花のような男だと思った。摘めばそれだけで萎れてしまうような儚い男だと思った。
     だからか、歪に歪みその赤い手は、心底そうっとその体を抱き寄せている。恭しげで、優しく、割れる宝石を扱うようなその手は、けれども当の体の主が見ることはない。その双眸は深い赤色に沈み、何者をも映さない。一見哀れにすら思えるその瞳を、けれども紅色はそう認識しなかった。美しいと思った。瑞々しい血の流れる心臓のような色だ。人間たちが謳う宝石の美しさとは、この赤い眼のことを言うのだろう。なるほどこれであれば、己の手中に収めんと躍起になるのも頷ける。
    「ふふっ」ふいに見つめていた赤の瞳が細められる「くすぐったい」
     それもそのはずで。塩、と呼ばれる男には、紅衣の男から伸びる白い蔦が伸びていた。白い蝶を伴う蔦は、いつもなら紅色の力を知らしめる脅威となるものだ。けれども今ばかりは……この美しく儚い白い男に触れる今ばかりは、その凶暴さの一切を拭い捨てている。そうっと、さも割れ物に触れるかのような慎重さで白い肌に、その唇に触れる。途方もない愛欲を示すその動きは、けれども見えない彼にとってはくすぐったいものだったのだろう。微笑む唇を今一度蔦で撫でてやれば、くすくすと愛らしい声がいっそうこぼれ落ちる。
    798

    soseki1_1

    PROGRESSハネムーンクルージングを満喫してるリズホワ/傭占
    (この後手マ♥でホワ🔮を5回はイかせるリズ🤕)
     麗らかな金色に白いベールを被せるハムエッグ。傍らに鮮やかに彩られたサラダを横たわらせた姿は、実に清々しい朝を連想させる。大皿の横に据えられた小皿にはフルーツドレッシングが揺蕩っており、そこから漂うさわやかな香りもそのひと役を買っていた。焼き立てのパンを詰めた籠を手渡したシェフ曰く、朝食時には一番人気のドレッシングらしい。客船に乗ってから数日、船員スタッフは慣れた風に微笑み「良い朝を」とだけ言って、リーズニングをレストランルームから見送った。
     依頼人から報酬代わりのひとつとして受け取ったクルーズは、リーズニングに思いの他安寧を与えている。慣れ親しんだ事務所には遠く及ばないものの、単なる遠出よりは幾らも気軽な心地で居られている。「感謝の気持ちに」という依頼人の言葉と心に嘘偽りはないとは、この数日で理解できた。クルージングの値打ちなど大まかにしか理解出来やしないが、おそらく高級な旅を与えられている。旅行に慣れない人々を満喫へと誘うスタッフの手腕も相応だ。乗船前は不信感すら抱いていたリーズニングも、今はこうしてひとり、レストランルームへ赴けている。満喫こそしているものの、腑抜けになった訳ではない。食事を部屋まで配膳するルームサービスは今なお固辞したままだ。満喫しつつ、警戒は解いて、身なりを保つ。この塩梅を上手く取り持てるようになった。
    2319

    recommended works