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    soseki1_1

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    soseki1_1

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    🤕に失恋する(しない)🔮
    /転生現パロ傭占+オフェ🏈

    「ナワーブな、アイツ好きな人いるらしいぜ」
     グラスの中の氷が傾けられてガラガラ音を鳴らす。
     失恋の音だった。
    「知らなかった?」
     イライ・クラークは沈黙した。それは思案の音でもあったし、悲しみの仕草でもあった。頭は冷静に現実を受け止めようとして、胸の裏側から鳴る鼓動がそれを尽く阻んだ。イライの煩雑とした内情の滲む顔に気づいまのだろう。眼前でビールを傾けた友人ことエリスが、人の良さげな顔の眉尻を下げて、人好きのする顔をしてイライを伺っている。この優しい友人に心配をかけるべきではないのか、はたまた甘えてしまうべきか。イライはたっぷり数秒悩んで前者を取った。帰来の善良さと、恋の独善が生んだ判断だった。赤い血の滴るこの傷を誰にも触られたくなかった。
    「皆知らないんじゃないかな。あまりそういう話は聞かない人だから」
     だから期待した。安心していた。時折少しだけ見つめては心を満たした。兵役を経た無骨な手の指先に見惚れて、森のように静かで美しい瞳に息を呑んだ。それら全てを内密に、それでいて踊るような心地で行った。楽しく、嬉しく、悲しく、落ち着かない、めくるめく素晴らしい日々。それが悲しさに塗れるなんて想像もしなかった。
     大好きだった。
     今も大好きなのに。
    「どんな人?」
     グラスを傾ける。カルーアミルクを失恋の味にしながら無理やり微笑む。
    「知りたいな」
     微笑みはさておき、出した言葉は事実だ。彼の好きな人を、自分の恋の日々を刺殺した相手を知りたいと思った。まるで仇を知りたがる無謀な願いだ。同時に、ひっきりなしに動悸する鼓動は知りたくないと叫んでいた。もう何も知りたくない。あの盗み見ていた目がどんな風に笑うのか、触れるときにはどんな指付きをするのか、眠るときに足は絡ませるのか、それとも抱き寄せるのか。キスをするときの顔は。どんなキスをするの? 全部が知りたかった。でも今は、もう何も知りたくない。
    「それがなぁ」骨でも噛んだのだろうか。片眉を歪めてエリスは言う「わかんなくて」
    「わからない?」
     イライも同じように眉を歪める。血を流す心を更に串刺しにするイライの目論見は外れ、曖昧な答えばかりが残されている。聞き返す言葉に、エリスはビールのジョッキを重々しくゴトリと置いて続けた。
    「好きな奴がいるってだけ教えてもらったんだ。前に。でもどんな人なのかって聞くとはぐらかされてよ」
     なにそれ。どうして。イライは、そういった言葉を紡ごうとした。しかし募りきった感情が喉を塞ぎ、呼吸を薄くしていた為に声なんて出せたものではなかった。指が震えるのを誤魔化すためにグラスを傾ける。まろやかな甘さが舌に乗る。
    「でも心底好きだって笑ってたんだよなぁ」
     ごつ。と、硝子のグラスが机に落っこちるように置かれたことに、それが自分の手による音であることに、全てに気付けなかった。唇を噛みしめる代わりに声を閉ざし、目を瞑り切る代わりそっと伏せる。瞬くと、酷く熱い目の奥から涙なんてものが零れ落ちそうで、イライは何も出来なかった。ただ黙る他なかった。これじゃあ恨むことも目指すことも出来ない。夢見ることすら許されない。
     味蕾に残る味がただただ何度も口の中で反響している。
     カルーアミルクなんて頼まなければよかった。
     ずっと痛いのに、ずっと甘いままだ。
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    soseki1_1

    DONEまーふぃーさんの赤塩FA
     花のような男だと思った。摘めばそれだけで萎れてしまうような儚い男だと思った。
     だからか、歪に歪みその赤い手は、心底そうっとその体を抱き寄せている。恭しげで、優しく、割れる宝石を扱うようなその手は、けれども当の体の主が見ることはない。その双眸は深い赤色に沈み、何者をも映さない。一見哀れにすら思えるその瞳を、けれども紅色はそう認識しなかった。美しいと思った。瑞々しい血の流れる心臓のような色だ。人間たちが謳う宝石の美しさとは、この赤い眼のことを言うのだろう。なるほどこれであれば、己の手中に収めんと躍起になるのも頷ける。
    「ふふっ」ふいに見つめていた赤の瞳が細められる「くすぐったい」
     それもそのはずで。塩、と呼ばれる男には、紅衣の男から伸びる白い蔦が伸びていた。白い蝶を伴う蔦は、いつもなら紅色の力を知らしめる脅威となるものだ。けれども今ばかりは……この美しく儚い白い男に触れる今ばかりは、その凶暴さの一切を拭い捨てている。そうっと、さも割れ物に触れるかのような慎重さで白い肌に、その唇に触れる。途方もない愛欲を示すその動きは、けれども見えない彼にとってはくすぐったいものだったのだろう。微笑む唇を今一度蔦で撫でてやれば、くすくすと愛らしい声がいっそうこぼれ落ちる。
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    soseki1_1

    PROGRESSハネムーンクルージングを満喫してるリズホワ/傭占
    (この後手マ♥でホワ🔮を5回はイかせるリズ🤕)
     麗らかな金色に白いベールを被せるハムエッグ。傍らに鮮やかに彩られたサラダを横たわらせた姿は、実に清々しい朝を連想させる。大皿の横に据えられた小皿にはフルーツドレッシングが揺蕩っており、そこから漂うさわやかな香りもそのひと役を買っていた。焼き立てのパンを詰めた籠を手渡したシェフ曰く、朝食時には一番人気のドレッシングらしい。客船に乗ってから数日、船員スタッフは慣れた風に微笑み「良い朝を」とだけ言って、リーズニングをレストランルームから見送った。
     依頼人から報酬代わりのひとつとして受け取ったクルーズは、リーズニングに思いの他安寧を与えている。慣れ親しんだ事務所には遠く及ばないものの、単なる遠出よりは幾らも気軽な心地で居られている。「感謝の気持ちに」という依頼人の言葉と心に嘘偽りはないとは、この数日で理解できた。クルージングの値打ちなど大まかにしか理解出来やしないが、おそらく高級な旅を与えられている。旅行に慣れない人々を満喫へと誘うスタッフの手腕も相応だ。乗船前は不信感すら抱いていたリーズニングも、今はこうしてひとり、レストランルームへ赴けている。満喫こそしているものの、腑抜けになった訳ではない。食事を部屋まで配膳するルームサービスは今なお固辞したままだ。満喫しつつ、警戒は解いて、身なりを保つ。この塩梅を上手く取り持てるようになった。
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