地獄の門は閉じている②「いいニュースと悪いニュースがある、どっちから聞きたい?」
二本指を立てた金髪碧眼の美男子が言った。人好きのする屈託のない笑顔でこっちを見つめ、甘く細めた瞳を一つ二つ瞬かせる。テーブルに置いたコップには暖かいミルク、皿の上には美味しそうなホットサンド。パンの間から具材が零れるくらい分厚いそれを片手に取って、画面の中で彼は笑った。
「じゃあ、悪いニュースから」
どっちも聞きたくないんだけどなって言葉は、画面の向こうには届かない。そりゃそうだ、彼が語りかけているのは向かいの席に座る女優にだし、私は画面越しにそれを眺めるただの観客。オーディエンス。背中に花でも背負ってるんじゃないのかってくらい爽やかに、彼は口元をゆっくり撓ませている。さっき食べたホットサンドのパンくずさえ美しい。
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