Recent Search
    Create an account to bookmark works.
    Sign Up, Sign In

    艾(もぐさ)

    雑多。落書きと作業進捗。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍵 🍡 💮 👍
    POIPOI 33

    艾(もぐさ)

    ☆quiet follow

    大鶯小噺の導入部分。放置しっぱなしになりそうなんで冒頭だけ投げ。

    #大鶯
    theGreatAngels

    鶯丸への感情を自覚していない大包平×鳥目の鶯丸 この本丸で、動物の名を号に含むモノはその特性に引きずられる。
     それは顕現してすぐ、近侍で初期刀の歌仙兼定から本丸の案内がてら説明されたことではあった。
    「主が無類の動物好きでね。幻獣…竜の類であっても、伝承の中に描かれるような性質が現れてしまうんだ。」
     一種の個体差だと捉えてくれと言われたその時、真っ先に浮かんだのは先に顕現していると聞き及んだ同郷の太刀だ。これについては他意はなく、顕現の口上を述べ終わるか終らないかのところで審神者が「大包平が来たよ鶯丸!」と騒いだ所為でその名が頭にこびりついていたからである。そうでもなければ、元の所在を共にしていた獅子王や鳴狐あたりが真っ先に浮かんだだろう。
    「鶯丸もか。」
    「そうだね。でも彼は影響は薄い方だよ、寒さに弱いくらいで。」
     思い浮かんだままその名を口にすれば、歌仙は心得ていたようにそう返した。殊更影響を受けているモノは、二重三重と特性を持っていて苦労を強いられることもあるのだと。
     彼はそうないから安心してくれ、と続ける表情は妙に柔らかいもので、何やら勘違いをしているのが容易く察せられた。安心って何だ。俺はあの剣の何をも心配していないが。
     そうだ、そう聞き及んでいた。鶯丸は寒さに弱い程度のもので、安心していいと。
     ―それじゃあ、これは何だ。
    「おおかねひら。」
     困ったように、目の前に立っている鶯丸が眉を下げる。そこに浮かんでいるのが微笑であることにどうしようもなく苛立った。何故笑う。何故何も言わない。何故、俺を見ない。
     鶯丸は部屋の中で立ったままだ。いや、立ったまま、は語弊がある。彼は己より余程馴染ある筈のその部屋で、入口に立つこちらには目もくれず途方に暮れたように立ち尽くしていた。
    「鶯丸、お前」
     呼びかけに思わず、といった風に反応したその萌黄色の瞳が、うろ、と彷徨う。その身体は向き合っているにも関わらず、奇妙な程に視線がかみ合わない。
    「視えていないのか。」
     腹の奥からこみ上げる熱いものを抑え付け絞り出した声は、激情からかみっともなく震えた。表情など恐らく滑稽な程に歪んでいただろう。
     けれどそのどれにも反応することなく、鶯丸は薄く笑んだまま、そしてやはり困ったように、そろりとその瞳を彷徨わせるだけだった。―まるで、音の出所を探るように。
     それは夏の黄昏時。奇しくも酉の刻と呼ばれる、明暗入り混じる夕暮れの事だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    艾(もぐさ)

    PAST2019.11.4発行。
    準々決勝後の月島と山口。トスと影山と春についての話。
    カプ要素ないですが、書いてる人間が月影の民なのでアレルギー持ちの方は気を付けてください。

    FINAL1作目公開記念再録。
    と言っても話的には2作目後なのでアニメ派の人にはネタバレです。閲覧は自己責任でどうぞ。

    完売して再版予定もありません。当時手に取ってくださった方ありがとうございました!
    【web再録】春/境「春が終わったら、何になると思う?」



    *  *  *



    春高、準々決勝後。
    鴎台に敗北を喫したその日、民宿に戻ってから夕飯まで自由時間を言い渡されたものの満身創痍の身体に出歩く気力はなく、結局部屋に残ることにした。
    そもそも、まだ高校生の自分には滅多に来れない地だというのに観光なんて浮かれた気持ちは全く起こらず、画面越しに見たことのあるようなする街並みに、ああ実在するんだな、なんて呑気な感想を抱いただけだったのだ。
    それよりも。あの雑踏の中に紛れ込むよりも、早くコートに立ってみたい、だなんて。
    どこかのバレー馬鹿達が乗り移ったような思考に、うげえ、と思わず顔を顰めたのはほんの数日前の事だというのに、何だかもう何週間も経ったような気がしている。それだけ怒涛で、詰まりに詰まった三日間だった。
    7498

    艾(もぐさ)

    PAST第三者視点や写り込み・匂わせ自カプ好きが高じた結果。
    別キャラメインの話に写り込むタイプのくりつるです。
    村雲(&江)+鶴丸。村雲視点&一人称。
    別題:寒がり鶴と、腹痛犬の恩返し。

    この他、創作独自本丸・演練設定捏造など盛り込んでます。
    鶴丸が村雲推し。つまりは本当になんでも許せる人向け。

    ※作中に出てくるメンカラーは三ュのものをお借りしていますが、三ュ本丸の物語は全く関係ない別本丸です。
    【後夜祭/鍵開け】わんだふるアウトサイド ここの鶴丸国永は、寒がりだ。
     とは、俺がこの本丸にやってきて数日経った日、同じ馬当番に当たった日に彼から教えてもらったことだ。
    「鶴の名を冠しておきながらこれじゃあ、格好つかんだろう?」
     内緒だぜ、と少しばかり気恥しそうに言った彼に、じゃあ何で縁もゆかりも無い俺に、と表情─どころか声に─出してしまったところ、彼はさして気にした風もなく「気候から来る腹痛なら気軽に相談してくれよ」と笑った。心から来るものには力になれないかもしれないが、とも。
     それだけで、上手くやっていけそうかも、とお腹の奥底、捻れた痛みが和らいだのを覚えてる。
     実際、彼が寒がりだということを知っている仲間は少なかった。彼と同じ所に長く在ったという刀が幾振りか。察しがよく気付いている風な刀もいたけれど、そういった刀達はわざわざ口や手を出そうとしていないようだった。それは、彼が寒さを凌ぐことに関してとても上手だったからかもしれない。
    16066

    艾(もぐさ)

    PAST第一回綴恋合せ展示用小説。突然ハムスター化した伽と、それについては心配するでもなく一緒にいる鶴の小噺。まだデキてない2人。創作動物審神者がいます&喋ります注意。捏造は言わずもがなです。
    22'3.27 ぷらいべったー初掲

    パスワードは綴恋内スペースに掲載しています。
    【後夜祭/鍵開け】君と食む星 伽羅坊がハムスターになった。
     何故なったのか、と聞かれても分からない。朝起きて、畑当番の用意をして、朝ご飯を食べ、冬でもたくましく芽吹こうとする名も無き雑草たちを間引き土を作り、さて春に向けての苗を──と立ち上がったところで、何やら足袋を引っ張られる感触があるなぁと思ったら足元にハムスターがいた。
     小さくふくよかで、野鼠とするには頼りない焦げ茶のそのかたまりを目にした瞬間、何でこんなところに、と考えるより早く思った。
     あ、伽羅坊だこれ。と。
    「伽羅坊?」
     悩むより聞くのが早い。呼びかければ、ハムスターもとい、伽羅坊は小さく「ぢっ」と鳴いた。ハムスターの基本的な鳴き方自体は鼠と変わらないからこれが普通なんだろうが、すこぶる不機嫌極まりなさそうなそれにくつくつ笑いが込み上げる。見れば、小さな耳の下は微かに赤毛が混じっていた。ああ、やっぱり伽羅坊だ。
    22143

    related works

    recommended works