ぬくぬくになるだけじゃすまないふとしたきっかけから急速にロを意識するドのお話。
お題「春」「恋の予感」(お互い無自覚/同居してそこそこ)
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ドラルクにとって、春とは恋の季節である。己がという話ではない。こうして暖かくなると、昼を生きる小さな隣人達の狂おしいほどに愛を求める春特有の鳴き声が、ナオォーンナオォーンと聞こえてくるからだ。
近隣を根城にしていたのだろう。昼夜問わず行われるそれはジョンと共に城に引き籠もりがちだったドラルクの耳にも届き、そのたびに「春とは恋の季節だな」と春陽を知らぬドラルクへ毎年思わせるのだった。
「おっと、失礼」
新横浜でもどうやらそれは変わらないらしい。盛んな鳴き声は聞こえていたものの、初めて目の前で鉢合わせてしまった光景に思わず吸血鬼は詫びを入れた。
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