Forget me. Can’t 「忘れてください」
その手紙はコズプロの副所長宛てに届いた。差し出し人はHiMERU ではなく十条要。ファンレターへの返事に使っていた勿忘草色のレターセットに、一言だけ綴られた言葉には不自然な不誠実さがあった。
「これってどういうことっすかねー」
「どうもこうもこのまんまっしょ、朝イチで呼び出されてヘビちゃんに問い詰められてさ、あーこわっ」
「寮の部屋は変わりなくて、貴重品だけがない様子や」
その日を境にHiMERU は姿を消した。ちょうど大きなツアーを終えての休養期間で、細かい仕事は残りの3人でもこなせた。
「天城氏、所在はまだですか」
「そっちが見つけられねぇなら俺っちじゃどうにもならないっしょ」
事あるごとに呼び出されていつものやりとりをして、面倒くさい儀式だが、メンバーとしてもコズプロとしても絶対に忘れてやらないという意地があった。
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