君色クリームソーダ、僕色レモネード「お疲れ〜♡」
担任教師は帷の外で、呑気に棒付きキャンディーをしゃぶっていた。空は茜色で、恵が中に入ってから過ぎた時間の長さを思い知らせる。足元の影は立っているその男のそれを想像させる長さだ。
仏頂面で歩いてくる生徒を見つけると、長い体をのっそりと伸ばした。
「無傷なのは偉いね」
恵は撫でようと伸ばされた手を軽く払う。
「ま、二級だったので」
「当然でしょ」
日曜の夕方の学校には人の気配が無い。少年サッカーチームの練習が終わるのを待って帳を下ろしたのだ。春先の長くなった昼が名残惜し気に西の空に張り付いているが、東の空からはゆっくりと夜が這い上がって来る。
「アンタついてくる必要、なかったと思いますよ」
「自信あるねぇ。一応恵も入学したばっかりだしねえ」
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