左手に焼鳥持ったカインが人にぶつかって謝ったり励ましたりする話栄光の街の住人はすべからく善良で明るく、人好きのする人間が多い。顔見知り同士が道ばたで出会えば握手に始まりハイタッチ、はてはハグからダンスにまで及ぶこともある。同じ中央の国出身者でも、栄光の街の明るさは別物だと肩をすくめる者も多いが、カインはこの街の屈託ない人々が好ましかった。声は聞こえど姿の見えない視界にもすっかり慣れてしまったけれど、やはり喧噪にふさわしい賑わいをこの瞳いっぱいに映したい。街を歩く足を止め、空に浮かぶ<大いなる厄災>を眺めてはほんの少しだけため息をつく。
ふと、背後から肩に軽い衝撃を感じた。普段は気配を研ぎ澄ませて道行く人々にぶつからないよう気をつけているが、どうしても時々はこういった事故が起こってしまう。
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