ミスタの初夢 今朝、ヴォックスが夢に出てきた。ミスタが仕事部屋に入ると、デスク前の椅子に座ってコーラを飲んでいた。コーラを飲んでいるだけでこんなにセクシーなのは、イギリス中探しても彼だけだ。たとえそれがミスタの夢の中のことにすぎないとしても。
「城が燃える夢を見て、目が覚めてしまったんだ」
ヴォックスは言って、床を蹴って子供っぽく椅子をくるくる回転させた。長い脚の爪先が空で描く美しい弧を目で追いながら、ミスタは言う。
「城を守るためにそこで戦ったんじゃなかったっけ」
「夢で記憶を完全に再現できるわけではないようだな。だが、戦って死ぬ方がずっとマシだ。夢の中の私は口もきけず涙を流すばかりで、そこから何か行動したり解決を試みようとしないんだからな。愚かな話だ」
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