けんかその日は、未曾有の猛暑であった。
エアコンをつけて、お気に入りの机でお気に入りの本を開く。最近手に入れた本は、至って平凡な男二人の恋模様を描いている。世間にある壁を越えてでも結ばれようと奮闘するその姿と、たどたどしいやりとり。なんて可愛らしくてハラハラする物語だ。
一章を読み終えてふぅ、と休憩を取ろうと本を閉じる。
「なに?昼間っからまたエロ本?」
「……その口を閉じてどっか行けよ、アルバニャン。」
「手厳しいな〜、お前の部屋の方が涼しいんだからいいだろって、なんか本ない?あ、ゲームでもいいよ。」
机に顎を置くようにしてこちらを見上げるアルバーン。確かにこれは「あざとい」。サニーが好きそうな顔をしてる、というと流石に怒られそうだな。
「おにぃは横から上目遣いするのが好きだよ。」
「聞いてねぇよ。」
浮奇にテレパシーでも習ったのか、と疑問に思えば
「ファルガーさ、顔に出過ぎ。流石に分かるってば!」
とケラケラと笑う声が狭い室内に響く。
「……だる」
「は?今なんか言った?」
「言ってない」
「言ったって」
「うるさい」
「はぁ〜?!」
「なぁんだよアルバニャン?!」
2人とも声を荒らげ、机を挟んで睨み合う。
すると扉が勢いよく開き、3つの双眸がこちらを睨んできた。
「「「2人とも、暑苦しい!キャンキャン煩い!!!」」」
「わ、悪かった」
「ご、ごめん」
「ここは揃わない(ねぇ)んだ」
「「あ?」」