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    yuakanegumo

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    yuakanegumo

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    恋人ヴィク勇❄️⛸
    バックハグして、言いたいことだけ言って、言い逃げする勇利くんに振り回されてしまうヴィクトルのお話😊
    ふわっとしたお話になったので、ポイピクにあげます。ふわっと読んでくださるとありがたいです。
    うかれたびくゆう。

    「油断ならない」

    #ヴィク勇
    vicCourage
    #SS

    「油断ならない」 おれが愛弟子である勇利と付き合い始めて知ったことが二つある。
     一つ目は、おれのことを、おれが思った以上に好きでいてくれたこと。そして二つ目は、その愛情表現がとてつもなく不器用なこと、だ。
     
    「びくとる!」
    「わっ…! ユウリ、どうしたの?」
    リビングのソファーに座るおれの背中に、とん、と小さな衝撃がある。振り向けば、満面の笑みを浮かべた恋人の姿があった。
    「びっくりした?」
    「うん。すごく驚いたよ」
    最近のユウリは、どうやらおれの後ろから気づかれないように近づき、ハグするのがマイブームらしい。驚くほどに可愛い。天使かな。
     愛しい恋人は、おれが手にしていた紙の束を指しながら、首を傾けた。
    「ヴィクトル、今、何してるの?」
    「明日のミーティング資料、確認してるんだ」
    「そっか。僕も一緒に見ようかな」
    今日のユウリは、ちょっと甘えたな気分のようだ。子猫や子犬のようにじゃれついてくる仕草がたまらず、おれの頬は緩みっぱなしだ。
    「良いけど、見ても面白くないかもしれないよ」
    「大丈夫だよ――ねえ、ヴィクトル?」
    「んー…?」
    名前を呼ばれ、振り返ろうとしたその瞬間、肩に回されたユウリの腕に力が込められた。そしてさらりとした恋人の頬が触れ、熱っぽいその吐息が肌をくすぐり、おれの耳元で――
    「――びくとる、だいすき」
    「……!」
    かすれたような声に、甘い愛の言葉。不意打ちのような小さな水音。ユウリは、おれの頬に触れるだけのキスを落としたのだった――
     
    「ユウリ……!」
    熱くなった頬を押さえて慌てて振り向けば、告白の大胆さとは裏腹に、なぜか恥ずかしそうに唇を尖らせておれを半眼で見つめる恋人の姿が見える。
    「……聞こえた?」
    「うん! もう一回! ユウリ、もう一回聞かせてよ」
    今、だいすき、って言われた?――動揺しながらも、おれはユウリにアンコールをかける。
    「え!? だめだよ、恥ずかしいから!」
    「ええっ? ユウリのけちっ」
    「ケチじゃないよ。今日はもうだめ。また今度ね!」
    「あっ、ユウリ……!」
    ユウリの残像ばかりを掴むおれの手。運動神経の良さを無闇に発揮して腕の中から逃げ出したユウリは、あっという間にリビングの扉を開けて、廊下へと駆け出していってしまった。パタン、と、ドアの閉まる音が広い室内に虚しく響く。
    「逃げられた……」
    小さなため息をつく。
    「……今の録音しておけば良かったね。ねえ? マッカチン」
    「ワフ……」
    同意を示すようなさびしげな声を聞きながら、足元に丸まっていたマッカチンのやらわかな毛並みをわしゃわしゃとかきまぜた。
     ユウリの愛情表現は不器用だ。
     そのアーモンド色の瞳はいつも熱っぽくおれを見つめてくれているのに、ユウリから愛の言葉を告げてくれる機会は残念ながら少ない。けれど、
    ――びくとる、だいすき。
    今でも耳に残る甘やかな恋人の言葉に、思わずにやけてしまう。心に、温かなものが満ちて、誰に聞かせるわけでもなく、おれは独り言を呟いていた。
    「……おれも大好きだよ、ユウリ」
    「またこんど」の約束は、今度果たしてもらおうかな、ユウリ。ちゃんと、覚えておいてね。
     

    おしまい
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    dandyhamaki

    MAIKINGべったーに投げてたやつ。荘園ENN組の馴れ初めというか知り合うアレソレ途中まで。
    最終的に初セッセするまで書こうとしてたと思う。
    初期に描いた落書き漫画とかの要素が所々ある
    「さわって」



    不意に発せられた言葉は実に小さく、しかし彼の声の低さからかしっかりと私の耳に届いた。


    −−−−−−−−−



    彼が、ノートン・キャンベルが荘園にやって来て何度か試合をやり過ごして来た頃だったろうか。
    試合の際の諸連絡以外では、彼から話しかけられたのは初めてだった気がする。


    「その眼は過去も覗けるんですか?」

    と。
    その時私はどう返したんだったか。

    この荘園に来る前は『彼ら』から告げられた予言に対し、興味を抱く者は少なくなかった。
    しかし私はそれ以上もそれ以下も話してはならなかったし、どちらにせよその好奇心が猜疑心になり、段々と罵りに変わる事が大抵で………ああ、そうだ。確かこう言ったのだ。

    「もし見えたとしたらそれは必要になる事なんだと思うよ。」

    と。

    −−−−−−−−−


    気のせいか、それから彼を、ノートンを何度か試合以外で見かける様になった気がする。
    彼は率先して試合に出ている気もする。
    彼が誰かと話すのをよく見る気もする。
    彼と試合が同じになる事が増えた気もする。

    今となってはアレは気のせいではなかったのだろう。


    「何か居るんですか? 4501