久しぶりの遠出で、あまりに楽しくて、二人揃って時間のことなど忘れて遊び尽くした。そう、完全に帰る時間のことなど頭から抜け落ちてしまっていたのだ。それに気づいたのは終電時刻の十五分前。目の前の料理を口の中に詰め込み、居酒屋を飛び出して慣れない土地を直感頼りに駅まで走った。さらに、道中で突如として降り出した大雨に見舞われ、見事にずぶ濡れだ。駅のホームで逃した終電電車を見送った二人はその場に項垂れた。でも、何だかそれすらも楽しくて、顔を見合わせて笑う。
だが、どうしたものか。こういう時に真っ先に浮かぶのはタクシーに乗ることだが、今いる場所からタクシーを使うにはあまりにも距離が離れていて早々に選択肢から外れた。次に思い浮かんだのは、朝までやっているカラオケボックス。終電を逃した時の常套手段として最適なカラオケだが、何せ二人ともびしょ濡れだ。猛暑が続いた夏が終わり、短い秋はあっという間に過ぎようとしている。来週には初冬を迎えるといわれているというのに、このままカラオケに入ろうものなら確実に風邪ひいてしまうだろう。
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