喫茶店のプトオク「いらっしゃいませー」
「ブラックコーヒーを…」
「かしこまりました」
私が働いている喫茶店には、毎日のように足を運んでくださる常連さんが沢山いる。小言を言い合いながらも決まって同じものを頼むおしどり夫婦。何々君が何々ちゃんを好きらしいなんてありがちな学校のゴシップで盛り上がるティーンの女の子たち。
良く言えば古き良き、悪く言えば少し古めかしいこの喫茶店。めったに顔を出さないマスターが営むここには、大勢の人たちが目まぐるしい日常から一時の憩いを求めてやってくる。
そして週に一、二回、必ずブラックコーヒーを頼んでは数時間ぶっ通しでノートパソコンに向かっているこの男性もそう。一度も色を入れたことがないだろう艶やかな黒髪の七三分け、真面目な黒縁眼鏡と青いよれよれのネクタイ。いつも難しい顔をしながら、私には何が何だかわからない文字や数字で埋め尽くされた画面と向き合っている。
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