すべては君をスターにする為に「類、おまえいい加減団員達に顔を見せる気にはならないか?」
それはかれこれ既に指の数では数えきれないほどされてきた司くんからの提案だった。僕はまたかと彼に聞こえないぐらい小さく息を吐く。
「何度も言ってきてるけど僕はそれを聞き入ることは無いよ」
言っておくが人見知り等そんな馬鹿げた理由で断っている訳ではない。単純に現時点で僕はその必要性を感じていないからだ。僕は君も含め素晴らしい3人の魅力的な共演者がいればそれで十分だと思っている。今の僕らは上層部にも満足させる事ができるショー(戦場)を作りあげる実力さえ持ち合わせているのに君ときたら何を考えているんだか下の子達と共演しようなんて言う。戦場のスターになるのに遠回りしようと言っているのと一緒だという事に気付いているだろか。寧々もえむくん、そして僕も1等席で見てみたいんだよ。僕らの司くんが1日でも早く戦場のスターになる瞬間を。
まぁ、しかしながら司くんを戦場のスターにと言うけどそれは僕らが勝手にしてあげたいよね、っていう僕らだけの夢であり目標だ。それに他者が参加してしまえばえむくんはともかく、寧々は…良い顔する確率は低いと僕は思う。
「ならば、それがオレからの命令だとしてもか?」
おや、僕はなぜか司くんに銃口を向けられた。彼は今どんな気分で僕に銃口を向けているだろうか。悪いけど僕はその行動は脅すことさえ不慣れな彼に対して鼻で笑いそうになってしまう。でもそこは我慢だ。彼がそれで不機嫌になってはつまらない。たまには彼らしくない脅し遊びに付き合ってみようではないか。
「司くん…愛する人に銃口を向けるのはどんな気分だい?」
「お前も、愛する人に銃口を向けられるのはどんな気分だ?」
自身に向けられる銃口と冷たい視線。蜜蜂のような、なんて甘ったるくて可愛らしい表現なんて付けられない、まるで猛毒を持つ雀蜂の鋭い針に標的にされているかのようだ。
「なんだかゾクゾクするね」
「変態め」
何とでも言いなよ。どこか呆れたような態度をする司くん。だけど僕は見逃さなかった。ほんの少しだけ口角が上がった君こそ真の変態だと僕は思うよ。それにそんな様子を見せてくれたと言うことは、そろそろ良い気分に仕上がったに違いない。それではそんな司くんにはそろそろ変態から反撃させて頂こうではないか。
「変態で結構。___これで…よしっと」
今度は僕の番だ。
「なんのつもりだ」
なんのって。なんのつもりもないって言ったら君は笑ってくれる?僕は僕なりに君と楽しい殺し愛をしようと誘ってみたのだけど彼には分かりずらかったみたいだ。
「今度は司くんの番だよ。愛する人に銃口を向けられるってのはどんな気分だい?」
「…類、また新しく銃を新調したのか」
「おや?恋人の私物の変化にすぐ気付いてくれるなんて嬉しい事だね。最近僕のお気に入りなんだ…で?話しをはぐらかさないで。どんな気分だい?司くん」
ほら、言ってみて。
「…ゾクゾクするな」
ほら、やっぱり。
僕達ほんと。
酷く、似た者同士だね。