こころ「少年、私は君に不快な思いをさせてしまっただろうか?」
「え?」
――時が止まったように、とは正に今の瞬間に使われるのだろう。
アオガミの発言が一切理解出来ずに思考が停止する一方で、少年はそんなことを冷静に考えてしまっていた。
「……」
「待って。アオガミ、待って。アオガミ!」
数秒の沈黙を肯定に受け止められてしまったのだろう。少年から視線を逸らして目を伏せるアオガミ。そんな彼に少年は勢いよく抱きついた。何時にない少年の行動に驚き、小さく「少年」と呼ぶアオガミ。
「どうしてそうなるの!?寧ろ、俺が何かした!?」
少年の叫びが寮室内に響き渡る。
隣室にまで聞こえるだろう声量であった。しかし、遠慮をしている余裕など少年にはないのだ。
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