だれにもおしえてあげないよ。 ベテルの研究者達よりもアオガミを知る者はいないだろうと、少年は冷静に理解していた。
知恵であるというのに立ち会いを許可されないメンテナンス。いつの間にか治っていた指先の塗装。アオガミが生まれた時の事。きっと、彼らは自分が知らないアオガミについて沢山の事を知っているのだろうと、少年は理解していた。嫉妬を抱きながら。
(でも)
己の頬を撫でる大きな白銀の手に、少年は自身の手を重ねる。
ただ触れるのではない。躊躇いながらも、のばしてくれた手。優しくなでる冷たい指先。
(この感覚を知っているのは、俺だけだ)
アオガミの掌に唇を触れさせながら、少年はそっと微笑むのであった。
***
アオガミは少年について詳細を教えられていた。
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