迷子宙は一人きりの教室で日誌の欄をひとつ、ひとつ、埋めていく。
同じ日直の子は今日はおやすみ。一人で二人分の仕事をこなして、最後に2人分のマスを使って“春川宙”と大きく名前を書いた。
宙は自分の名前が大好きだ。
一度は嫌になったこともあったけど、「ソラ」と呼ぶあの甘い色を見たあの日から、宙の名前は特別になった。
窓の外では日が傾き始めている。
鮮やかな夕焼けの色に、宙は夏目の色を思い出した。
いけない。こんな時間に一人で居ると知れたら、ししょ〜に怒られてしまう。勿論「ソラはよく変な事に巻き込まれてしまうかラ、絶対に肌身離さず持ち歩くこト!」と渡された夏目お手製の魔除けを一応は持ち歩いているけれど、早く帰るに越したことはない。
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