「逃避行」「星」「そっちへ行っても、彼女はいないぞ。」
いつも選択を誤りそうになる時、導いてくれるのは煉󠄁獄だった。
「着替えはどれくらい必要かな。」
「一つも要らないんじゃないか。」
「パンツも?」
「パンツも。」
「風呂の道具くらいは持って行くか。」
「必要なものは後から買えばいいだろう。」
下の駐車場で待ち合わせた時間に、煉獄の部屋を訪ねるとまだ荷造りの真っ最中だった。小振りのバッグに日用品と2、3日分の着替えを詰める友人を見守って、行く宛も決めていない旅路のルートをマップアプリで検討する。
「ちょうどいいのがあった。」
「スコップ?」
「長靴と、タオルも多めに持っていこうか。」
「買えばいいって言ったんだ。」
「こういうのは、あるものから使った方がいい。やっぱり着替えも必要だな。」
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