#お狐パロ
「……ちゃん……おに……ん…」
僕を呼ぶのは誰…?まだ体が思うように動かないんだ…
誰かの呼び声に暁人は徐々に意識を浮上させる。
「おにい……おき……お…ちゃん…!」
「ッ!……麻里…僕はどれぐらい寝てた…?」
呼び声は妹の麻里だったようで暁人はガバリと起き意識を覚醒させるかのように頭を横に軽く振る。
そんな姿を見て妹の麻里は心配そうに眉を下げながら「三日間寝てたよ…」と教えてくれた。
「3日か…前よりはマシだけどやっぱり力が吸われてる感覚は拭えないよ…」
暁人と麻里は社にある御神水で生き永らえてる狐だ。勿論悪さをする方の狐ではなく所謂神獣というモノに値した狐であった。
そんな暁人はある日いつものように御神水を口に含んだ瞬間倒れそれを見ていた麻里が大慌てで暁人を御神水から遠ざけたが既に遅く御神水は穢れを隠していたかのようにじわじわと黒く澱み始めた。
その日から暁人の力は徐々に穢れに冒され眠る必要のない神獣だが糸が切れたかのように眠る日があった。
「絵梨佳ちゃんと凛子さんの持ってきた他の社の御神水だけじゃ穢れが消えないってこと…?」
「そうみたいだね…早く穢れをどうにかしなきゃこの社まで危ない…」
暁人が眠るようになった数週間前偶々神社の見回りに来ていた絵梨佳と凛子の「ここは澱みがある」という言葉を聞き神主が慌てて2人を暁人と麻里に引き合わせたのが始まりだ。
その際絵梨佳が持って来ていた御神水が少しだけだが暁人の体力を回復させた。
ただ…穢れを祓うまでの力は戻らず絵梨佳と凛子に穢れを祓ってほしいと依頼をしたのがこの数週間の出来事だった。
「あと少しで絵梨佳ちゃん達が穢れを祓ってくれるから…お兄ちゃん頑張って…」
「うん…麻里もここの御神水飲めなくて辛いだろうけど…こんな辛い思いしなくて良かったよ」
暁人のその顔は辛そうに見えるも心の底から麻里を案じ大切に思うものが伺えそんな兄に麻里は何もできない自分の無力さに拳を固く握るしかなかった。
「私は大丈夫だよ。絵梨佳ちゃんが多めに御神水持って来てくれたから穢れが祓われるまでは大丈夫。」
悲しそうに眉を下げ自らの拳を強く握り締める妹の姿に暁人は同じく眉を下げそっと麻里の手に自らの手を重ねようとした瞬間襖の奥から声がかかった。
「暁人様、麻里様、穢れを祓ってくれる方が参りました。」
声を掛けたのは神主らしく来訪を知らせてくれた。
「ありがとう。お迎えに上がるので拝殿でお待ちして貰ってください」
「分かりました」
神主に指示を出すと暁人はそっと身嗜みを整え麻里の支えを頼りに拝殿の方まで向かう。
拝殿の方では既に人がいてその姿に暁人も麻里も目を見開いた。
「あ、貴方は…!」