※基本的にCP要素なしのつもりで書いていますが、CP要素ありとして読んでいただいても構いません。
❏設定❏
・とくになし
・モブとの会話多め
❏本文❏
彰人「おい、さすがにもう終わりでいいんだよな?」
絵名「なによ、そんなに早く終わらせたいわけ?」
彰人「当たり前だろ。パンケーキを餌に、一体何時間連れまわしてんだよ」
絵名「あんたね……奢ってやったんだから、ちょっとは感謝しなさいよ」
彰人「パンケーキ一枚で、資料集めに一時間、買い物に二時間……おまけに、荷物持ちで紙袋五個も持たされて、割に合うわけねえだろ」
絵名「あーもう、うるさい! 文句の多い男はモテないんだからね! 黙ってついてくる!」
彰人「どんな環境で育てば、そんなに横暴になれんだよ」
絵名「あんたと同じ環境で育ったんですけど、その年でもう物忘れ?」
彰人「あ?」
絵名「なによ」
モブ店員「あの~」
彰人・絵名「……!」
彰人「あ……もしかして、この店の人ですか? すみません、店の前で口喧嘩をしてしまって……」
絵名(うわ……彰人のこのモード、見るたびにキツイ……)
絵名「すみません、すぐに立ち去りますから……」
モブ店員「あ、いえいえ、彼氏さんがお持ちの紙袋がどれもファッション関係のようなので、服をお探しでしたら、ぜひうちの店にも寄ってもらえないかと……」
彰人・絵名:二人同時に、うげーっという表情を浮かべる
絵名「彼氏なんかじゃ、ありませんから!」
彰人「本当は他人の振りをしたいところなんすけど、勘違いされたままのほうがイヤなんで言っておくと、ただの姉貴なんで」
絵名「なによ、他人の振りって!」
彰人「んだよ」
モブ店員「あ、あの、店の前で喧嘩は……」
彰人・絵名「すぐに立ち去るって言ったのに、引き留めたのはそっちだろ!(でしょ!)」
絵名「ちょっと、彰人! かぶせてこないでよ!」
彰人「かぶせてきたのはお前だろ」
司・冬弥:近くで買い物をしていて、少し離れた場所から二人を眺めている
司「な、なんなのだ、あれは……すごく仲が悪そうなのに、ぴったりと息があっているではないか……」
冬弥「彰人の話によると、二人は喧嘩が絶えないそうですが……本当は仲がいいんだと思います」
司「あの様子を見ていると、どうやらそのようだな」
冬弥「それより、咲希さんへのプレゼントはこれでいいんですか?」
司「おお、そうだった。プレゼントはこれにする。付き合わせてしまって悪かったな、冬弥」
~次の日~
彰人:通学中
彰人「……ったく、昨日は散々だったな」
彰人:ピタリと立ち止まると、通りがかりの店のショーウインドーに映っている自分の姿を見る
彰人「絵名のやつ、思いっきり引っ掻いてきやがって」
彰人:頬についた引っ掻き傷を指でなぞりながら溜め息をつく
彰人(あの後、さらに買い物に一時間以上付き合わされた挙句、帰ってからもポーズの参考写真を撮らせろとかなんとか無茶言い出して、断ったら爪で引っ搔いてくるわで……)
モブ男子「よお、東雲」
彰人「はよ」
モブ男子「どうしたんだよ、その怪我」
彰人「ちょっとな……」
モブ男子「なるほど、女か」
彰人「は?」
モブ男子「顔よし、運動神経よし、歌も踊りも上手い……勉強はできなくても、そんだけの才能に恵まれてんだからさ。ちょっと女と喧嘩したくらいでヘコんでんなよ」
彰人「なに勘違いしてんだ、お前。これは……」
モブ男子「昨日駅前で見たぜ、めっちゃ可愛い女連れてたじゃん。あの子と喧嘩したんだろ?」
彰人「あのな……ったく、なんで、どいつもこいつも絵名のことを……」
モブ男子「お、絵名っていうんだ、彼女の名前」
彰人「だから、彼女じゃ……」
絵名「彰人~!」
彰人「げっ……なんで、このタイミングで……」
モブ男子「お、噂をすればってやつだな」
絵名「彰人、あんたお弁当忘れていったでしょ」
彰人「忘れたんじゃねえよ、今日は売店で買って食うっつっただろ」
モブ男子(お、お弁当って……彼女に作らせてんのか!? なんて羨ましいヤツ……でも、忘れていったってどういうことだ? まさか、高校生なのにもう同棲……)
絵名「あれ、そうだったっけ? じゃあ、これって、もしかして……」
彰人「親父のじゃねえか? 今日は絵に関する仕事でどこかに出かけるとかで、弁当にするって母さんに言ってるのが聞こえたからな」
絵名「やば! い、急いで帰んなきゃ!」
絵名:大急ぎで元来た道を走り去る
モブ男子「……親父? 母さん?」
彰人「だから言っただろ、彼女じゃねえって……姉貴だよ」
モブ男子「……!?」
モブ男子(あ、姉貴!? こいつ自身もイケメンな上に、あんな可愛い姉がいるとか、アリなのか!?)
モブ男子「な、なんだ、そうだったのか……」
彰人「なんで、どいつもこいつも、絵名のことを彼女だと思うんだよ」
モブ男子「そりゃ……」
モブ男子(一緒に腕を組んで歩いたり、名前で呼び合ってりゃ、そういうふうにしか見えねえだろ……としか言えねえけど、言ったら怒りそうだよな、こいつ)
モブ男子「勘違いされるのが嫌なら、まずは名前呼びをやめてみたらどうだ?」
彰人「それはできねえ」
モブ男子「なんでだよ」
彰人「あいつを、姉なんて呼びたくねえからだよ」
モブ男子「う~ん……まあ、なんにせよ、お前のその顔を見たら、誰でも彼女持ちだって思うだろうなあ……お前、猫飼ってそうに見えねえし」
彰人「はあ?」
モブ女子「あ、東雲く~ん、おはよう! ……って、どうしたの、その顔! もしかして、彼女に引っ掻かれたの!?」
モブ男子「ほらな」
彰人「……」
~終~