未定 リィン──リリィン────
ざわつく人々の声を鎮めるように鈴の音が鳴り響く。リィン、と鳴るごとに波紋が広がりあたりの音を消していく。鈴の音に続いて太鼓や笛の音が混ざり始めると列席者は自然と奥へと視線を向けた。空は雲もまばらだというのにパラパラと降り始めた雨が少しずつ、確実に地面の色を濃くしていく。並び立ついくつもの朱い鳥居を超えた先、色とりどり、模様も様々な狐面の人々が見つめる先。平安の世に着用されていた狩衣に袖を通し凛と美しく佇む真っ白な男がひとり。遮るものもない陽射しを反射して煌めく雨粒が彩る姿は神々しく、ただひとり狐面をつけていないその男は誰かを探して視線を巡らせた。
「それで?今度の喧嘩の理由は?」
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