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    acc1j

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    ママとパパと子供たち。

    リケってネロのことママと思ってるよね。と同僚に言ったら、リケだけじゃなくて全員だと言われ、それはそう…と思いました。ネロは魔法舎のママ。
    ※本編にはあまり関係ないです。

    #ブラネロ
    branello

    穏やかな夜に祈りを「ネロ!聞いてください!!」

     リケは憤慨していた。これはもう、誰かに聞いてもらわねばと思ったところで、頭に浮かんだのはネロの顔だった。
     まだ少し朝食には早いけれど、この時間ならネロはもうとっくに起きて朝食の準備をしてくれている。手伝うついでに、話を聞いてもらおう。そう思い立ったリケは、一直線に、冒頭の台詞と共に、キッチンに突撃したのだった。
    「お、おはようリケ。今日も早いな」
    「おはようございます」
     迎えてくれたのは、想像通りの優しく目を細めた、柔らかい微笑みで。小麦の焼けるいい匂いもあって、リケの怒りはすーっと引いていく。
    「僕も手伝います!」
    「はは。ありがとな。じゃあ、手洗って、野菜を頼もうかね」
    「任せてください!……今日の朝食はなんですか?」
    「パンと、コンソメスープ、ココットにサラダだな。サラダとドレッシングは、リケにやってもらおうかね」
    「頑張ります!パンはネロの手作りですよね?」
    「そうだよ」
    「やったあ!」
     ネロの焼き立てのパンは、毎日出るわけではない。普段は市販のもので、ネロの時間があるときに時々作ってくれるのだ。今日は珍しくアーサーがいるから、気を遣ってくれたのかもしれない。
     もちろん、いつものパンもおいしいけれど、ネロのパンは別格で。皆がそう思っているから、その日はパンが減る勢いが違う。売れ残りなんて、絶対に出ない。
     きっと今日は、あまり集まらない北の魔法使いたちも、朝が遅いファウストもやってくるに決まっている。遅れても、誰かが呼びに行く。
    「そういえば、なんか話しがあったのか?」
    「そうでした!」
     サラダの飾りつけに悩んでいると、横から軽く声がかけられた。それに、ここにやってきた理由を思い出す。その間もネロは自分の手元を見ており、好きなタイミングで話していいという気軽さが伝わってくる。
     その気安さがリケは好きだった。きっと、真剣に聞いてほしいと言ったら、ネロは手を止めてこっちを見てくれる。そういう優しさを持っているひと。
     ネロに習ってリケも手を止めずに、先程のことをぷりぷりと話し出した。

    ・・・

     リケの朝は早い。そして仲良しのミチルも、しっかり者なので朝はそれなりにはやかった。だから朝はよく顔を合わせる。そのまま分かれてそれぞれの用事を済ませることもあれば、一緒に行動することもあって。今日は一緒の日だったから、リケも嬉しかったのに。
     今日はミチルが任務だけれど、明日は二人とも空いていた。だから、どこかにお出かけしようと誘ったのに。国が違う自分たちは、一緒に行動できるタイミングが合わないことも多いのに。
     一瞬ぱっと笑顔を浮かべてくれたから、そのまま了承を貰えると確信した期待は、はっとしたようにおろおろと目線を彷徨わせ始めたことによって、萎んでいく。
    「どうしたんですか?」
    「えっと、明日は用事があって…」
     別に、突然誘ったのはこちらだから、先約があるのなら仕方がない。諦めるし、責めたりしないのに。ミチルは何故か恥ずかしそうに、言い辛そうにしていて。
     そういえば、いつもならこういう時、あれをする予定これをする予定と色々話してくれて、よければ一緒にどうかと誘ってくれることも多い。なのに、今日は何も話してくれないし、気まずそうで。
    「……もしかして、僕と遊ぶのが嫌だったのですか?」
    「え!?そ、そんなことないです!」
    「だったら、なぜ何も説明してくれないのですか。いつもなら話してくれるし、誘ってくれるのに。明日の用事は、僕はついて逝ったら駄目なものなのですか?僕だって、理由を聞けば無理を言ったりしないのに」
    「一緒に…。でも、それだと…」
     立て続けに言葉を重ねるリケに、ミチルはおろおろするばかり。けれど、その反応から、決してリケが一緒に行けないわけではないと察する。要は、ミチルがリケと行きたくないのだ。
     そう判断したリケは、きっとミチルを睨む。
    「もういいです。ミチルが僕と一緒に行きたくないのなら、そう言えばいいのに。明日は楽しんできたください」
    「あっちがっ!リケ!」
     呼び止めるミチルの声を無視して、リケはその場から早足に去っていく。


     ──そして、今に至るというわけだ。

    「なるほどなあ」
    「……僕、ミチルに嫌われてしまったんでしょうか」
    「でも、最初は嬉しそうだったんだろ?」
    「はい。それは間違いありません」
    「だったら、ちょっと言い出しにくかっただけかもな」
    「友達なのに?」
    「友達だからこそ、言いにくいこともあるんだよ」
    「……難しいです」
     あとは出すだという状態で、休憩に誘われたリケはネロに貰った搾りたてのジュースを飲みながら話していた。リケのおかげで早く終わったからと、新鮮なフルーツで作ってくれたのだ。程よい甘さと冷たさがリケを冷静にしてくれる。
     しゅんと項垂れる頭を、ネロの大きな手がわしゃわしゃと撫でてくれる。それだけで気分は少し上昇するのだから不思議だ。
     そして、落ち込んでいてもネロのご飯はおいしかった。
     朝食を取った後、後片付けも手伝っていると、ブラッドリーがやってくる。

    「おう、東の飯屋。なんか食いもんねえのか?」
    「さっき食ったばっかだろ」
    「あれくらいで足りるかよ。肉出せ肉」
    「もうっブラッドリー!作ってもらって文句を言うのはどうかと思います」
    「文句じゃねえよ。リクエストだ」
    「いや、文句だろ…」
     呆れたように溜息をつきながらも、何か食べ物を用意しているネロは、やっぱり優しすぎると思う。ネロの代わりにむっとブラッドリーを睨みつけていれば、こちらに目をやったブラッドリーが肩を竦めた。
    「おいおい、しけた面してんなあ。南のちっちゃいのと喧嘩でもしたか?」
    「なんで…」
    「いつもより覇気がねえ。……あと、南のちっちゃいのが朝泣きべそかいてるのを見かけたからな」
    「ミチルが…?」
     それを聞いて、リケはむっとする。ミチルに理由もわからぬまま拒絶されて、泣きたいのはこちらなのに。
    「おいおい、マジの喧嘩かよ」
    「明日、遊びに誘ったらはぐらかされたんだと」
    「明日あ~?あー…なるほどなあ…」
     めんどくせえなと片眉を上げるブラッドリーを、ネロがジトっとした目で見ながら、焼き立てのベーコンを手渡す。
     どうしてネロがそんな目でブラッドリーを見ているのかは分からないが、ブラッドリーは料理の乗った皿を嬉しそうに受けとると、その視線を受けて少し考えるように視線を巡らせる。そして、思い出したようにガシガシと頭を掻いた。
    「何か知っているのですか?」
    「まあ、知ってるっつーか…」
     面倒なことに巻き込まれた、と思っていることを隠しもしないブラッドリーに、もう一度尋ねようとしたとき。ぱたぱたと誰かがキッチンにやってくる。
    「あ、ブラッドリーさん!やっぱりここにいた!!あの、明日のことなんですが……あ、リケ……」
     やって来たのは、ちょうど話題にあがっていたミチルで。リケがいるとは思っていなかったのだろう。リケが視界に入った途端、言葉が萎んでいき視線も俯いたのを見て、リケは少しだけ納まっていた怒りが再び燃え上がってくるのを感じた。
    「明日?明日は、ブラッドリーと遊びに行くのですか?二人で遊びたかったから、僕に何も言ってくれなかったのですか?」
    「おいおい、気色わりいこと言うなよ。俺様が、仲良しこよしで遊びに行くわけねえだろうが」
    「だったらなんで…。もしかして、ブラッドリーが脅して、ミチルによからぬことをさせようと…。ミチルを口止めしているのですか?」
    「んな、みみっちいことするかよ。大体、口止めっつってもフィガロに言うなとは言ったが、てめえに言うなとは言ってねえ。つまり、黙ってるのはこいつの意思だ」
    「そんな…なら、どうして」
    再び、リケがミチルに向かって問いただそうとしたとき、ネロが手を叩いて流れを止めた。
    「ほら、揃ってあんまり責め立ててやるな。そんな空気だと、言いたいことも言えなくなるかもしれないだろ。言えない方にも言えない理由ってもんがあるんだよ。この後任務なんだから、気がかりは減らしてやんな。あんたは、その皿早く開けてこい」
    「おう。せっかくの肉が冷めちまうとこだったぜ」
     ネロに促され、ブラッドリーは機嫌よく出ていく。きっと食堂か自分の部屋に行ったのだろう。涙目だったミチルは、ぽんぽんと優しく頭を撫でられて、肯定されたからか、ほっとしたように口元を緩めていた。
    「まずはなんでリケが怒ってるのか、思った事を言ってやればミチルも自分の気持ちが言いやすくなるかもな。ミチルも、言いたくないのか。言えないのか。いつかは言えることなのか。それくらいは教えてやった方が、リケも少しは安心するかもな」
    「……はい」
    「思った事…」
    「隠し事をされたから怒ったのか?」
    「いいえ。秘密は、友人同士の嗜みです。ブラッドリーとミチルが友人同士なら、寂しいけれど仕方がありません。……でも、いつもなら僕がいけないところでも、お土産を持って帰って来ると、楽しそうに話てくれるのに。ミチルの態度は、まるで僕と一緒にいたくないように感じられて、理由も分からないまま拒絶されたように思えて悲しかったんです」
    「違います!リケと一緒に遊ぶのはとっても楽しいです。……ただ、言い辛くて…」
    「なんでですか?」
    「……明日は、ブラッドリーさんに魔法を教えてもらうんです。普段、北の魔法使いなんかって言ってるのに、こういう時に頼っているのを知られるのは恥ずかしくて。それに、僕の先生はフィガロ先生なのに、こっそりブラッドリーさんに習うなんて、リケに不誠実って思われて嫌われないかって不安になって……」
    「嫌いになんて…」
     ミチルの言葉に、信用無いのかとリケまで不安になってくる。そんな空気を察したのか、ネロが今度は二人の頭を柔らかくなでてくれた。
    「ミチルは色々考え込んで、その分心配事も多くなっちまうんだろ。リケも、理解してやれとは言わないが、そういう奴もいるんだってことは覚えてやっときな。それに、嫌われたくないってことは、それだけ好かれてるってことじゃねえかな」
    「好かれてる……。ミチルは、僕のことが好きだから、嫌われたくないし、嫌われないようにしようとして、不安になる…?」
    「リケだって、ミチルに嫌われたかもって不安になっただろ?」
    ネロは、リケの立場にもミチルの立場にもなって、言葉を届けてくれるから。どう言っていいか分からなくて、ぐるぐるしていた感情を落ち着かせてくれるのが分かる。
    「……ミチルは、僕が好きですか?」
    「大好きです!」
    「ネロも、僕に嫌われたくないと思いますか?」
    「はは。ま、そうだな」
    「そっか…。僕も、ミチルに嫌われたと思って、不安になって、怒ってしまいました。すみません」
    「僕の方こそ、リケを不安にさせてしまってすみませんでした!……本当は、リケの方が魔法が上手だから、追いつきたくてこっそり覚えたかったのもあるんです。でも、やっぱりリケと二人で一緒に覚えたいから。明日、一緒にブラッドリーさんに教えてもらいませんか?」
    「はい!」
     二人でぎゅっと手を握り合って、笑う。そして、はっとする。そういえば、片付けの途中だったのだ。リケがぱっと振り向くと、いつの間にか流しは綺麗に片付いてしまっていた。
    「ネロ、お手伝いに来たのにすみません!」
    「ん?いいよいいよ。そんなことより仲直り、お疲れさん。ミチルも、これで任務に集中できそうか?」
    「はい!大丈夫です!!」
     片付けを放り出したばかりか、ここで言い争って仕事の邪魔をしたのに手をひらひらと振って、ネロは笑ってくれる。手を出せと言われ、ぽんと一つずつ手渡されたのは、いつの間に焼いていたのか、クッキーの包みだった。
    「わあ…!」
    「いいんですか!?」
    「ああ。おやつにでもしな。こっちはブラッドリーくんに。くれぐれも明日はよろしくなって、賄賂に持っていけ」
    「もう、賄賂だなんて」
    「えへへ、ありがとうございます!」
     ネロに手を振られて見送られながら、二人はブラッドリーの元に向かう。キッチンを出ると、丁度食べ終わった皿をブラッドリーが持ってくるところだった。
    「ブラッドリー!ちゃんとお皿を持ってきたんですね」
    「放置してると、飯屋がおっかねえからな。てめえらは、もうすっかり元通りってか?」
     さすがだな。と呟いたのが聞こえたが、ネロのおかげで仲直りできたのは本当だし、リケにとってネロが凄いのは当たり前のことなので、特に疑問を覚えることなく話を続ける。
    「明日は、僕も一緒にお願いします」
    「へえ?それは構わねえが、俺になんか得があんのか?対価のねえ奉仕はごめんだぜ。南のちっちゃいのに教えるのはフィガロへの嫌がらせだが、オズは何とも思わねえだろうしな」
    「ちゃんと賄賂もあります!」
     ミチルが、ネロに渡されたものをブラッドリーに渡す。それを受け取ったブラッドリーは、中身を確かめると、機嫌よさげに口端を吊り上げた。
    「こんないい貢物もらっちまったら、聞いてやらねえわけにはいかねえな。明日は扱いてやるから覚悟しとけよ」
    「ブラッドリーこそ、くしゃみしないでくださいね」
    「言うじゃねえか」
     わしゃわしゃと、どこかネロと似た手つきでリケとミチルは頭を撫でられる。もう、髪が乱れます。なんて、二人で反抗してみるけれど、その声に嬉しさが滲んでしまうのは仕方がない。
     普段は粗暴で、素行が悪くて、ネロみたいに真っ直ぐ慕えないけれど、なんだかんだ頼りになって強いところは尊敬しているのだ。ブラッドリーはそのまま機嫌よくキッチンに戻っていく。
     明日、一緒に訓練ができる確約を得た二人は、ミチルは任務のためにリケは見送りのために皆が集まっているホールまで駆け出した。

    ・・・

     次の日。
     朝食はいつも通り美味しかったし、ミチルは昨日怪我もなく帰って来たし、ブラッドリーもくしゃみをしなかった。リケにとって完璧な一日の始まりだと言えるだろう。
     訓練は、厳しかったけど分かりやすくて。上手くできたら思いっきり褒めてくれるので、やる気も出る。ブラッドリーはおしゃべりが上手だと褒めたら、何故か微妙な顔をされたけれど。
     ドロドロになりながら頑張っていると、ネロが差し入れに来てくれた。冷えたジュースは疲労を忘れさせてくれるし、おやつは気力を漲らせてくれる。やっぱり、ネロの料理は凄い。
     夕飯は、オムレツにコーンスープにフライドチキン。頑張っていたご褒美らしい。リケもミチルもとても喜んだけれど、ブラッドリーだって大喜びで。これならまた教えてやってもいい。なんて、言っていたものだから、ミチルと二人顔を見合わせて笑った。ネロのおかげで、また近いうちに魔法を教えてくれそうだ。
     今回、ネロにはとてもお世話になったから、今度何かプレゼントしよう。もちろんブラッドリーにも。なにがいいだろう。そんな話をミチルとするのも、とても楽しかった。



     ──という話を、晶はリケから聞かせて貰っていた。今日一日、本当に楽しかったのだろう。まだ興奮冷めやらぬ様子で、目をキラキラとさせている。手には、ちょっとでもリラックスできるようにとネロが淹れたホットミルクがある。
     ずずっと晶は自分の分を飲む。……うん。ほんのり甘くて優しい味だ。
     リケがずっと落ち着かないのは、この後ネロが枕元で絵本を読んでくれるからというのもあるだろう。本当に、今日はおはようからお休みまで、リケにとって完璧な一日なようだ。リケがこんなに嬉しそうだと、晶も嬉しい。
    「あんなに興奮して、いつまでも寝なかったらどうすっかね…」
     とネロがっ心配していたのを聞いたが、きっと大丈夫。訓練で身体はくたくただろうし、ネロの読み聞かせはゆったりと眠りに誘われて、心地いいのだと以前聞いたから。それは晶もなんとなく分かる。ネロの落ち着いて柔らかい声は自然と安心して、力が抜ける気がするのだ。
     話し終えたリケは、こくこくと残りのミルクを飲みほして、立ち上がる。
    「ネロがいつ来てもいいように、寝る準備をしてきますね。賢者様、おやすみなさい」
    「はい。おやすみなさい」
     笑顔でリケに手を振って、彼がいなくなった後聞いたばかりの話を反芻する。リケには言えなかった言葉が、思わず出てきた。
    「ママとパパだ…」
     兄弟げんかに手を焼くママと、休日のパパ。もうそれにしか聞こえなくて、笑顔の裏で口に出さないようにずっと言葉を噛みしめていたのだ。
     少し離れたところで、ネロとブラッドリーの会話が耳に入る。
    「っと、そろそろリケのところに行かねえと」
    「は?ああ、てめえも甲斐甲斐しいな」
    「うるせえ」
    「その後でいいからよ、俺の部屋に来いよ。飲もうぜ」
    「は?今日はお子ちゃまたちに付き合って疲れてんだろ。さっさと寝ちまえよ」
    「馬鹿。あれくらいで俺様が疲れるかよ。昨日良いつまみが手に入ったからな。こいつには、最高の酒が必要だろ?それを一人で飲むのは味気ねえからな」
    「……わかったよ。リケ寝かしたら、そっち行く」
    「おう、待ってるぜ」
     きっと、もうここには晶しか残っていないので気が緩んでいるのかもしれない。きっと、そのつまみというのは、先程聞いた賄賂のことだろう。そういうことになっているんですね。と心の中で呟いて、微笑む。もう、会話が子供が寝静まった後の夫婦のそれだ…。とは口が裂けても言わない。
    「ネロ、ホットミルクごちそうさまでした」
    「ああ、賢者さん。どういたしまして。賢者さんももう寝るか?」
    「いえ、後の片づけくらいは引き受けようかと。リケが楽しみにしていたので、早く行ってあげてください」
    「はは。じゃあ、お言葉に甘えようかね」
     そう微笑んだネロの表情は、珍しく何の憂いも浮かんでなくて。ずっと、こんな顔をしていてほしいな、と願ってしまう。それは、とても難しいことなのだろう。けれど、きっと彼が今夜一緒に過ごす相手も、同じことを思っているはずだから。

     ──少なくとも明日の朝日が昇るまでは。

     そんな祈りを抱きながら、マグカップをシンクにつけた。
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    44_mhyk

    SPOILERイベスト読了!ブラネロ妄想込み感想!最高でした。スカーフのエピソードからの今回の…クロエの大きな一歩、そしてクロエを見守り、そっと支えるラスティカの気配。優しくて繊細なヒースと、元気で前向きなルチルがクロエに寄り添うような、素敵なお話でした。

    そして何より、特筆したいのはリケの腕を振り解けないボスですよね…なんだかんだ言いつつ、ちっちゃいの、に甘いボスとても好きです。
    リケが、お勤めを最後まで果たさせるために、なのかもしれませんがブラと最後まで一緒にいたみたいなのがとてもニコニコしました。
    「帰ったらネロにもチョコをあげるんです!」と目をキラキラさせて言っているリケを眩しそうにみて、無造作に頭を撫でて「そうかよ」ってほんの少し柔らかい微笑みを浮かべるブラ。
    そんな表情をみて少し考えてから、きらきら真っ直ぐな目でリケが「ブラッドリーも一緒に渡しましょう!」て言うよね…どきっとしつつ、なんで俺様が、っていうブラに「きっとネロも喜びます。日頃たくさんおいしいものを作ってもらっているのだから、お祭りの夜くらい感謝を伝えてもいいでしょう?」って正論を突きつけるリケいませんか?
    ボス、リケの言葉に背中を押されて、深夜、ネロの部屋に 523

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