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    ebizou_1127

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    現パロ容植

    猫耳としっぽ。はい、優勝!

    #成化十四年
    14thYearOfChenghua

    誘うしっぽ明日は二人とも仕事が休みなので、久しぶりに近くのバーへ飲みに出掛けた。

    気分良く飲んだ帰り道、汪植が言った。


    「こんな所に祠なんてあった?」


    何度も通っている道の筈なのに気付いていなかったのか、と訝しむ程に立派な祠がそこにあった。


    「あぁ、気付かなかったね。祀られてるの、猫みたい。変わってるなあ」


    灯明に照らされた中をよく見ると、随分艶かしい猫が祀られている。

    つんとすましたようなお顔が少し汪植に似ている気がしたので、私は思わず手を合わせた。


    『汪植とずっと一緒にいられますように。あっ、猫の神様と同じように猫耳としっぽの生えた可愛い汪植も見てみたいです。一日だけでいいので!』


    ついついくだらないことまでお願いしてしまったので、帰宅してから飲むつもりで買っていたハーフボトルのワインをお供え代わりに置いた。


    「容哥、何してるの?早く帰ろうよ!フットボール終わっちゃうよ!」

    「ごめん、ちょっと拝んでた!」

    「ええー?そんなに信心深かった?」


    私を振り返って微笑む汪植の頭に猫耳がくっついているように見え、思わず目を擦った。


    「どうした?もう眠い?でも今夜はそれ程飲んでないよね?」


    下から少し心配そうに私を覗き込む汪植の背後に、白くてしなやかなしっぽのようなものまで見えた気がした。


    「ごめん、ちょっと飲み過ぎたかも。早く帰ろう」


    フットボールを観たい汪植に断って、私だけ先に就寝する事にした。

    ここしばらく激務だったこともあり、直ぐに眠ってしまったと思う。

    夜中に汪植がベッドに戻ってきたのも気付かなかったのだが、明け方になって、私は妙にくすぐったい気がして目が覚めた。

    何か、短い毛の生えた柔らかいものが顎に当たっている。


    「何…?」


    手でそっと触ってみた。

    耳?

    動物の耳だ!

    ウチに犬も猫も居ないのに…!

    びっくりして思わずベッドで上半身を起こした。

    そこには、白い猫耳と長いしっぽの生えた汪植が、丸くなって気持ちよさそうに眠っていた。

    全裸に猫耳としっぽ!

    スゴイ!

    猫の神様、流石です!

    萌えを深く理解なさっている!


    ……いやいや!!!

    元に戻らなかったらどうしよう…これはこれで可愛いけど…何よりも汪植が起きたらびっくりするだろう。

    でも、私は、彼が目覚める前にどうしても確認したい事がある。

    しっぽの生え際を!

    …私は危うく声を出してしまいそうになった。

    想像通り!

    尾てい骨辺りから、すっと生えてる!

    そしていつものようにつるんと丸くて可愛いおしり!

    何だこれ、心臓が痛い!!!

    無理無理無理!!!

    こんな可愛いの無理だ。

    私は汪植を起こさないようにそっと抱きしめた。

    だが、しっぽに触れてしまった。

    起こしてしまったかもしれない。


    「んにゃ…」


    んにゃ?

    そんな事言ったことない…。


    「阿植、ごめん。起こしちゃったかな」

    「にゃにゃ」


    にゃにゃ?

    何か変だ。


    「阿植、落ち着いて聞いて欲しいんだけど…君、今しっぽと耳が生えてるんだよ。ホラ」


    と、私は白くて細いしっぽを手に取って、彼の目の前に持ってきた。

    汪植はそれをぼんやりと見つめていたが、やっと事態を理解したようで、私の手からしっぽを奪うとギュッと引っ張った。

    そして、そのしっぽの始まりが自分のおしりである事を確認すると、真っ青な顔で叫んだ。


    「にゃーーーーーーーーーーー!!!!!」


    汪植の口は『何だよコレッ!』と言っているように見えるのに、実際に出る声は『にゃー』なのだ。

    パニックになっている汪植を私はぎゅっと抱きしめ、


    「阿植、大丈夫。落ち着いて喋ってご覧。唇の動きで何を言ってるか分かるから」


    と諭した。


    「にゃっにゃっにゃにゃにゃあああああ(何で?何で?耳もあるよおぉぉぉ)」

    「うん、耳もあるんだ。ホントにごめん。昨夜あの祠で…私が『一日でいいから猫耳としっぽの生えた汪植が見たい』ってお願いしちゃったからだと思う」

    「にゃーーーーー!!!みゃみゃみゃにゃっみゃにゃにゃあああああああ(酷いよ!元に戻らなかったらどうするんだよ!早く祠へ行って取り消してきて!)」

    「えっ、猫耳の阿植をひとりで置いていけないでしょ。それに一日だけってお願いしたんだし…可愛いから写真撮っていい?」

    「ぎゃーーーーーーーーーーーー!!!!(ダメに決まってんだろぉぉぉぉぉぉ)」


    汪植が暴れるので、仕方なく後ろから手首で頸動脈を圧迫し、頸動脈洞性失神で『落とした』。

    ベッドに寝かせて、私は眠っている猫耳の阿植を眺めていたが、長い時間そのままにしておくのは危険なので、足を持ち上げ、血流を促して覚醒させた。


    「阿植、大丈夫?頭痛くない?」

    「にゃーにゃにゃっにゃにゃにゃ?(大丈夫。ホントに僕が言ってる事分かるの)」

    「分かるよ?」

    「にゃーにゃにゃにゃーーーにゃああああにゃうう(僕このままだったらどうしよう。容哥居なくなったりしない?)」

    「何言ってんの。居なくなるって何で?どんな阿植も私の可愛い阿植だよ?耳は帽子で何とかなるし、しっぽも背中に折り畳めば何となるんじゃない?ジムには行けないかもだけど、マシンはうちにあるので頑張ればいいし!」

    「にゃあ…(うん)」


    最初、すがるような目で私を見て、少し落ち着いたところで、下を向いてしょんぼりしてしまった阿植。

    勿論、猫耳もしっぽもしょんぼりしている。

    あまりにも可愛らしくて、つい、キスをしてしまった。


    「阿植…」

    「容哥…えっあっ喋れ…にゃあああああ」

    「ちょっ!阿植、もう一回キスしながら喋ってみて」

    「にゃっ、あ、あー!喋れる!でもさ、なにこれ、ずっと唇くっついてないといけないじゃ…にゃあああああああ」


    私は悪い事を思い付いた。


    「キスしたら喋れるってことはさ、粘膜が接していたら喋れるってことなんじゃない?」

    「にゃにゃにゃにゃーーーーあ!(何言ってんだよ!)」

    「つまりさ、こっちのお口だと喋りにくいから。もうひとつの方を試してみない?」


    私は今、史上最高に悪い顔をしていると思うし、後であの祠へ行って、うちにある一番良いワインをお供えしようと思っている。


    「うにゃにゃにゃにゃーーー!!!(もうひとつって、もうひとつって!!!)」


    顔を背けても、真っ赤になっている事が分かる。


    「別にずっとキスでも良いんだけどさ、喋りにくいかと思って。昨夜は阿植食べてないし、猫耳の阿植なんて超レアだし、是非食べさせていただきたい!」

    「うぎゃあああああ(ヤダ!絶対ヤダ!)」

    「ん〜?本当にイヤ?そんな事ないと思うよ?」


    汪植は、どうやらしっぽの事を忘れてしまっているらしいので、私はそっと猫が喜ぶしっぽの付け根をとんとんと触って撫でてみた。

    すると、おしりがピョンと上がって


    「にゃぁぁ〜(もっと!!)」


    と汪植が鳴いた。


    「にゃっにゃっにゃあにゃにゃあああああ(違うって!喜んでない!)」

    「うんうん、喜んでないよね、阿植。でもね、なでなでしてあげたい気分なんだ」

    「にゃ……」


    しばらくそのまま撫でていると、猫耳を時折動かしながら、甘えた目で私を見てきた。

    しっぽの先が、誘うように私の顎に触れ、


    「にゃぁあ(ねぇ、しよ?)」


    と言った。


    本当に、猫の神様ありがとうございます。

    後で必ず御礼参りに行きますので、しばらくお待ち下さい。



    …実験の結果、先程の仮定が実証されたのであるが…

    『あの時』汪植は喘いでいるか、私の名前を呼ぶか、好きと言ってくれるかしかしないので、別に『にゃー』でも構わないし、よく考えたら私は彼に喋る余裕すら与えなかった。

    どうせ外に出られないのだからと、自堕落にもずっとベッドにいて、猫耳汪植を堪能した。

    寝ては起き、猫が大好きな鶏のささみとサーモンのサンドイッチ(いつもは食べないのに)を作って食べさせて、また猫耳汪植を抱きしめて遊んだ。

    流石に疲れてしまってうとうとしていると、真夜中近くになって汪植に起こされた。


    「ちゃんと喋れてる?」

    「あ、うん、人語になってるよ。あ!耳ない!しっぽも!」


    私は写真を撮れなかった事を後悔した。


    「写真撮りたかった?」


    私があまりにもしょんぼりしているからだろう。


    「うん。だってすごく可愛かったから」


    すると、汪植は黙って自分のスマートフォンを私に見せた。


    「あ!」


    汪植は私が寝ている間に、眠っている私と猫耳の自分のツーショットを撮影していたのだ。


    「これ…勿論くれるよね?お願いします!」


    私は土下座する勢いで懇願した。


    「どうしようかなぁ」

    「何でも言う事聞きます!(結局いつでもほぼ何でも聞いてるけど!)」

    「じゃあ、もう一度あの祠へ行って、今度は容哥が犬耳としっぽ付けてもらえるようにお願いしにいこう!あ、いっそ本物の犬でもいいよ!ボルゾイなんかどうかな?」


    勿論、本気で言ってはいない事くらいは分かっているけど、いずれにしてもあの祠へ行かなくてはならない。


    「阿植。あの祠へ行こう」

    「えっ、いいよ!ボルゾイにならなくていいから!」


    慌てて否定する汪植が可愛くて、私はそのままぎゅっと抱きしめた。


    「違うよ。お礼に行くだけ」


    汪植と私は、今うちにある一番いいワイン、赤ワインの王様バローロを持って、祠へ向かった。

    しかし、昨夜の場所には祠が見当たらない。


    「このへん……だったよね?」

    「もしかしたら、秘密の場所に入り込んでたのかもしれないね。よかった、ボルゾイにならずにすんだよ?」


    私はあの艶かしい猫の神様を、もう一度思い浮かべてみたが、そのお顔がどうしても汪植になってしまう。

    汪植は私の御本尊様だから、もういいか。

    何となく、そう思えてきた私は、暗闇に向かって一礼をした。


    「気が済んだ?」

    「うん。帰ろうか」

    「そのワインどうする?」

    「うーん。暫くは飲まずに置いておくよ。取りに来てくださるかもしれないし」


    何だかすっきりした気分で、私はワインボトルの重さと汪植の手の温もり両方を感じて、幸せを噛み締めながら、夜の散歩を楽しんだ。

    あっ…

    猫耳の耳掃除、したかったなぁ。
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