暴力的なタンデムを君と1.
有線から流れているのは、おそらく流行りの洋楽だ。女性シンガーがハスキーな声で歌い上げるナンバーに、一虎君はモップを手にしたまま耳を傾けている。
今日はそれなりに忙しかったからか、その後ろ姿は少し気だるげだ。うなじに落ちた数本のおくれ毛を、思わずじっと見つめてしまう。そこにある、小さな青あざも。
ぶつけた、と一虎君は言った。そんなところをどうやってぶつけるのか、とは聞かなかった。どうせベッドから落ちたとか、ベタなことを言い出すに決まっているから。
「何」
オレの視線に気づいた一虎君が、振り返る。
「いえ、別に」
モップがけは大雑把だったけど、説教をする程じゃない。そんなギリギリのラインを狙って手を抜いているのではないか、なんて考えがふと頭に浮かんだ。一種の試し行為と言えばいいのか、一虎君は時々不真面目に振舞って見せて、こっちの反応をうかがうようなところがあった。その度にオレはつい、甘やかす方を選んでしまう。
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