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    MondLicht_725

    こちらはじゅじゅの夏五のみです

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    MondLicht_725

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    めんどくさい呪専夏五に巻き込まれナナミン

    #夏五
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    【夏五】めんどくさい 誰のせい、ということはない。
     しいて言うなら、灰原が自分の力量を見誤ったせいか。たくさんの荷物を両手いっぱいに抱えて、結果足元が疎かになり、転がっていた鍛錬用の竹刀に躓いた。
     …それを言うなら竹刀をそこに放置していたやつが悪いのだが、本当はそんなことはどうでもいいのだ。
     とにかく、躓いた灰原が前にいた七海にぶつかり、その七海が、さらにその前で丁度水を飲んでいた夏油にぶつかった。
     結果、夏油は盛大に水をぶち撒けてしまったのだ。たった今着替えたばかりのTシャツに。
    「七海、余分に着替え持ってたよね?」
     ぐっしょりと濡れてしまったTシャツをしかめっ面で抓みながら尋ねてきた夏油に、思考が固まった。
     それが、今の状況である。
    「貸してくれないかい」
     目の前でさっさと濡れたシャツを脱がれても、まだ頭が働かない。洗濯物を干す前のようにパンパンと小気味良い音を立て、濡れたシャツが飛沫を落とす。
    「七海、聞いてる?」
    「え、と、」
     訝しげな声と視線に、ようやく口が動く。ただし、焦りは増していく。
     夏油の言うとおり、いつも余分に着替えは持ってきている。汗かきなので、1枚では足りないのだ。
    「ないの?」
    「あります、が」
    「なら貸して」
     いいのかと聞きたいのに聞けない。ここにもう1人の先輩の姿がないのが幸いなのか不幸なのか判断が難しい。
    「心配しなくても、ちゃんと洗って返すって」
     沈黙を、嫌がっていると捉えたらしく、夏油は苦笑した。
     いや、そういうことじゃなくて――しかし、どうにも言いづらい。同じ敷地内とはいえ、寮まではそこそこ距離がある。いっそ裸のまま戻れば、と提案できる気温でもない。
     悩んで、結局カバンの中から新しいTシャツを引っ張り出す。
    「ありがとう」
     七海の様子がおかしいことをまだ訝しんではいたが、しかし躊躇することなく首を通す。
     当然、体格の差の分、サイズにも違いがある。丈はちょうど良さそうだが、胸囲がある分少し窮屈そうに見えた。ピッタリと体に張り付き、鍛え上げられた筋肉のラインがくっきり浮かび上がっている。
    「なんか夏油さんセクシィですね!」
     余計なことをさらりと口にする灰原に、頭痛がした。こうなった原因の一端だというのに、まるで気にする様子がないのはむしろ羨ましいくらいである。
    「じゃあ、洗濯したら返すから」
     別に寮に戻るまでのちょっとの間なのだからわざわざ洗濯する必要はないし、それよりも気になるのは別のことなのだがやっぱり言えない。
     はぁ、と曖昧に頷いているうちに先に荷物を片付けて行ってしまった背中を見送った。溜息が出る。
    「おつかれ」
     きっとなにもかも察しているだろう、珍しく実技授業の見学に訪れていた家入に、後ろから肩を叩かれた。
     面白がっている。この人もなかなかいい性格をしているのだ。
     できることならあの人と会いませんように。内心強く祈った。








     後日、貸し出したTシャツは、綺麗に洗濯され、畳まれ、紙袋に入れた状態で無事に手元に戻った。
     夏油からではなく、五条から。
    「助かったってさ」
     表面上はにこやかでも、目はちっとも笑っていない。淡白なようでいて、ことこのことに関しては熱く執念深いことを嫌でも知っている。
     ここでなんで五条が返してくるのかとか、夏油はどうしたのとか、野暮なことを聞いてはいけない。墓穴を掘るだけだ。ここは黙って受け取るに限る。
     そう、わかっているのだが。
    「…あまり心が狭いと、嫌われるんじゃないですか」
     思わず余計な一言を口にしてしまい、すぐに後悔する。いつも1言えば100返ってくるくらい五月蝿い五条が、無言のまま笑って肩を一度叩き、離れていった。
     信心深い方ではないのだが、ついつい胸の前で十字を切った。












    「お前、ぜってぇわざとだろ」
     唇を尖らせて、肩にぐりぐりと額を擦り付ける。背後から遠慮ない力で抱きついているのに、びくともしない。今は見えないが、涼しい顔をして笑っているのだろう。
     こちらだけがいつも振り回されている、と思う。ひとりでヤキモキして、ムシャクシャして、それなのに当の本人はそんな五条を楽しんでいるのだ。
     人当たりのいい柔和な顔をして、実はかなりいい性格をしているなんてことはとっくに知っている。
     悔しい。まるで五条だけが、好きみたいで。

    「――俺も浮気してやろうか」

     ボソりと呟いた、瞬間。
     気づけばひっくり返って天井を見上げていた。背中には、数秒前まで椅子がわりにしていたベッドのシーツ。

    「それは、やめておいた方がいいよ。相手のためにね」

     相変わらずの柔和な笑顔、けれど二の腕に食い込む力は強い。五条じゃなければ折れているんじゃないかってくらいに。
     ああホント――めんどくさいヤツ。
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