ちゅうけん だだっ広い広間の真ん中をロングスカートのように丈の長い神父服を揺らしながら歩く。
楽しそうな話し声、笑い声、泣き声、嗚咽、悲鳴、いいものも悪いものも平等に耳に入ってくる。
耳を塞ぎたくなるような言葉にはいつまで経っても慣れない。
「リル……様」
力無い声でそう呼び止められてリルは振り返る。
それと同時に目の前で倒れ込んだ女はリルの服を力強く掴む。
白い服を着た女、錯乱しているのか視線は定まらず、涙やなんやら色々でぐちゃぐちゃな顔をしている。
その信者服を着た女はリルの服を掴んだまま離さない。
「神父様」
「神父様」
「教祖様が見つからないんです」
「助けて」
「今すぐ殺し――」
震える手を薙ぎ払うわけにもいかず、リルは徐にしゃがみ込むと相手の口を手で塞ぎ、止められなくなっていたであろう言葉を無理やり止める。
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