報恩休暇 露女の投げキッスはいつもながら痛い。怨念の火の玉で焼かれた腕がじくじく疼く。
何人も行方不明者が出ているという廃ビルの地下で、壊れたエレベーターから湧き出てきたマレビトたちを蹴散らして、今。非常口からビルを出た暁人は、あまりの日差しに思わず呻いた。
カンカン照りだ。まだ梅雨にもならないのに、蝉の声さえ聞こえてきそうな強烈な太陽光線。先程まで薄暗くジメジメした地下に親しんでいた目が、くらりと眩む。
「はぁーーーーー…」
体力も気力もエーテルも消耗した。カラカラの体をさらに苛めるような、理不尽なくらいの猛暑だ。近頃の暑さときたら、どうかしてる。暁人はアジトへ帰還すべく、とぼとぼ歩き出した。
今回の依頼内容は、曰く付きの廃ビルの浄霊。問題なく達成したが、どうにも気分は優れない。戦いの立ち回りも自己採点は微妙。大した数でもなかったのに、一撃をもらってしまった。
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