狼獣人🎲×小説家📚小生は自分のことを、この世界に数多いる"不幸な人間"の中でも殊更…頭2つ3つ分抜けたぐらいには悲惨な人生を辿っていると、そう思っていたのですが。
飢えず、住むところにも困らず、暮らしに困窮もせず、健常なこの身体で前に進むことが出来るだけ幸福だと思った方がいいのかもしれません。"人間として生まれたこと"自体が最大の幸福なのかもしれないとも思う。小説の原稿を担当へ提出してきた帰り道、ネタ集めのついでに立ち寄った商店街で思わぬ気づきを得てしまった。
さて、なぜ小生が唐突に悟りを披露したのかというと……まずは目の前に広がる光景を説明致しましょう。
端的に言うと、道の中央で、人型の生き物が倒れています。後ろに手錠をかけられ、血まみれになった身体をべったりと地面につけ、虫の呼吸をしています。客を呼び込む威勢の良い掛け声が飛び交う商店街のど真ん中で、ですよ。頭頂部の左右から生えた3角耳、赤黒く染まった薄汚い下穿きから覗く黒ずんだ大きな尻尾。それが人ならざるものであることは一目瞭然だ。
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