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    hoshinami629

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    hoshinami629

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    禁軍右軍がわんこを拾って……という話。友尚は拾って来るくせに自分で引き取ったりしない男なのだ、という部分を書いたら満足した+この後犬が死んで阿選が何とも言えない気持ちになる、というエンドしか思い浮かばなくて辛い。続き書けそうなら書きますが……書いてて辛い……。

    #阿選
    asean
    #十二国記
    theTwelveKingdoms
    #友尚
    youshang

    禁軍右軍が犬を拾った 先王の命で江州へと進軍した、その帰りの道だったと思う。一匹の犬が隊の後ろをついて来た。飢えた野犬が人影を認めて近付いて来るのは、割合に良くあることだ。最初は麾下の一人が軽い気持ちで糧秣を分けてやっていた。帰投の途に就けば兵卒というものは、無事に終わったという安堵と、命あるものには優しくしてやりたいという感傷と、その両方を抱えるものだ。戯れに皆が犬の面倒をみたのも、そうした空気ゆえに発生した偶発的な出来事だった。
     犬はそれに味を占めてか、それとも習性ゆえに群れに混じりたいと思ってか、まるで一兵卒のように軍の中へ入り込むようになった。時は秋の終わり、初雪の降る前に鴻基へ到着したいと、誰も彼も気が急いていた。通常の進軍よりも速度を上げて、街道を踏破してゆく。肋の浮いた体格の良くない犬だから、途中で脱落するに違いない。そう思っていたが不思議と持ち堪えて、その犬はとうとう鴻基までついて来てしまった。今更何処へなりと行けと放したところで、絶対に纏わりついて来る。そのことは指揮官から兵卒まで、江州から戻った右軍の全員が理解していた。
     外朝の井戸でざぶざぶとその犬を洗い、甲斐甲斐しく蚤取りまでしてやったのは友尚だった。故郷の里では、遠浅の場所で漁をする際に必ず犬の助けを借りるのだ、と懐かしそうに語っていた。
    「こいつ、かなり賢いですよ。元々は野犬なんかじゃなく、誰かに飼われていたのだと思います」
    「それだけ分かるならば、お前が飼うと良い。慣れているのだろう」
     阿選はそう言ってみたが、予想に反して友尚は首を振る。
    「私が飼っても、構ってやる暇がありませんよ」
     なあ、と言って犬の頭を撫でている。ならば何故こんなに世話を焼いたのだ、と言いたくなったが、それが友尚らしくもあって、結局は苦笑するに留めた。
    「ならばどうする。誰かしらが引き取るべきだろうが……」
    「将軍は、犬がお嫌いですか」
     暗にこちらへ押し付けようとする気配を感じて、阿選は一つ首を振る。
    「私こそ飼うのは無理だ。友尚以上に構えないだろう。内乱の多い昨今だ、師帥以上の位の者は、いつ休暇が取れるのかも定かではない」
    「ならば、兵営で飼うのはいかがでしょう」
     恵棟が穏やかな声でそう提案する。この犬に愛着を持つ何人かが嬉しそうに笑った。
    「――そうするか。どのように面倒を見るかは任せる。一人の負担にならぬよう工夫せよ」
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    hoshinami629

    CAN’T MAKE禁軍右軍がわんこを拾って……という話。友尚は拾って来るくせに自分で引き取ったりしない男なのだ、という部分を書いたら満足した+この後犬が死んで阿選が何とも言えない気持ちになる、というエンドしか思い浮かばなくて辛い。続き書けそうなら書きますが……書いてて辛い……。
    禁軍右軍が犬を拾った 先王の命で江州へと進軍した、その帰りの道だったと思う。一匹の犬が隊の後ろをついて来た。飢えた野犬が人影を認めて近付いて来るのは、割合に良くあることだ。最初は麾下の一人が軽い気持ちで糧秣を分けてやっていた。帰投の途に就けば兵卒というものは、無事に終わったという安堵と、命あるものには優しくしてやりたいという感傷と、その両方を抱えるものだ。戯れに皆が犬の面倒をみたのも、そうした空気ゆえに発生した偶発的な出来事だった。
     犬はそれに味を占めてか、それとも習性ゆえに群れに混じりたいと思ってか、まるで一兵卒のように軍の中へ入り込むようになった。時は秋の終わり、初雪の降る前に鴻基へ到着したいと、誰も彼も気が急いていた。通常の進軍よりも速度を上げて、街道を踏破してゆく。肋の浮いた体格の良くない犬だから、途中で脱落するに違いない。そう思っていたが不思議と持ち堪えて、その犬はとうとう鴻基までついて来てしまった。今更何処へなりと行けと放したところで、絶対に纏わりついて来る。そのことは指揮官から兵卒まで、江州から戻った右軍の全員が理解していた。
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