志々尾限という少年は
不器用な性格からか
父兄や周囲に理解されず
妖混じりであることも相まって
つねに孤独であったけれど
正守から居場所を貰って
似た境遇の人間の傍にいることで
安寧を得た一方
その中で再び別の孤独を知り
心を閉ざしたまま成長した
そして良守と出会い
短い期間ではあったけれど
真っ直ぐな良守と過ごす日々から
喧嘩をして、和解して
肩を並べ、切磋琢磨しあえる仲間を
他人を信じる心を
己の傍らで涙する良守をみて
いままで知らなかった感情を理解し
抱えてきた孤独から抜け出せる
スタートラインに、やっと立つことができた
そのはずが
そこは彼にとってゴールテープだった
ゆえに笑みを浮かべて儚く消えてしまったのだ
志々尾側の孤独が鮮明に描かれているので
彼は良守の存在に救われて、満たされて
逝ってしまうわけだけれど
良守にとっても志々尾はとても大切な存在で
いわば生まれて初めて出来た
同世代同性かつ同業者の友達だったわけだから
これから沢山育んでいけるはずだった絆も思い出も、あの瞬間に全て途切れ奪われてしまった
その悲しみは計り知れない
良守と志々尾の抱える心の傷や
根幹にある優しさ、孤独は似ていて
時を重ねていけば、きっともっと分かり合えただろうし、互いによき理解者になり得たはずなのに
作中で、対等な目線から良守の心の穴を埋めてあげることができる存在は、志々尾限で
だから良守は志々尾限という存在を
生涯わすれることはないのだと思います
良守にとっての志々尾限という存在は
過ごした期間よりも密度が濃く
もっと傍に居たかった
居て欲しかった人なのだと思う
それでも良守は、過ごした日々を抱えながら、自分の成すべき事を成すために前を向いて歩いていく少年なわけです
私が持ち得る感覚だと
天国で良守が一番最初に出会う相手は
志々尾限だという解を得ています
これが地獄になってくると正守なんだが…
それはそれ
これはこれ
つまらぬひとりごとでした