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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆/雄英生

    #轟爆
    bombardment

    君への贈り物『爆豪、ばくごう』

    何度呼びかけても振り向かない、その理由は一応解る、耳にイヤホンを入れているから。でも、

    『わざとイヤホン入れることねえだろう?これじゃ俺と話できねえ』

    わざとそうしてるンだわテメェとする世間話なんかねーわ!という爆豪の片耳からイヤホンを取り上げ、片耳は俺に貸してくれというとまた嫌だねと言うが構わない。こんなことで引いていたらこの男は捕まらないのだ、

    『じゃあもう話かけねえ、代わりに爆豪の聞いている音楽を俺も聴く』

    ハァァ?だからテメェと仲良しこよしするつもりはねェっつってンだろォが!おお、これか?スマホのロック画面に浮かんだ再生ボタンを押すと流れ出したそれはクラシック風にアレンジされているけれど多分、

    (バースディソング?)

    誰かの誕生日なのだろうか?っと、話しかけねえって宣言したんだった、このイヤホンを取り上げられないためにもここは大人しく聴くに徹することにして暫く耳を傾けていると、別の曲に移り変わっていく。俺は音楽のことは詳しくないが、クラシックの他にもこれはロックというのだろうか?とにかく色々な曲が流れてくる。どうやら爆豪は色々なジャンルの曲を聴くようだ。

    (全く、こんなところまで掴みどころがねえな)

    そう、これほど言動や態度がデカいのに爆豪勝己という男は掴みどころがない。何を考えているのか解らないと幼馴染の緑谷が言うのも頷ける。そして、それなのに、

    『ああそれ、俺がかっちゃんに頼んだんだ、今月、12月21日はエリちゃんの誕生日でさ、エリちゃん文化祭でやった俺達のバンド演奏をすごく気に入ってくれたみたいだからバンド組でバースディソングの生演奏をプレゼントしようってことになったんだけど、爆豪なしじゃ成立しねーからさ、無理やり頼み込んだけど普通にバイオリン弾き出すからすげーよな』

    考えていることはひとつも解らなくても、その行動原理は良く分かる。爆豪がしようとしていることは物凄く目的も意図もはっきりしていて無駄がない。唯一無駄みてえなものがあるとするならば【説明不足】だろう、とにかく爆豪は素直じゃない、そしてそんな爆豪を俺は決して嫌いじゃない。好きか嫌いかでいったらむしろ、大いに好きだ。

    そうだ、エリちゃんの誕生日会には俺も参加して、大好きな爆豪の演奏を聞かせて貰おう。

    +++

    『…っていうことがあったよな』

    だからって何なんだ?4月19日の23時、そろそろ寝ようとベッドに入った途端にベランダから不法侵入してきた男は悪びれる様子もなく俺の手を取り、ぐいぐいと引っ張ってどこに行くかと思えばグラウンドβ、もしかして決闘でも申し込む気か、いや、コイツはそんな思考回路の持ち主じゃねえ、一体俺の誕生日にかこつけて何を企んでやがるのか、普段その思考の一挙一動が手に取るように読めてしまう轟が企てたサプライズとしては上出来といったところか、

    だったら驚かせてもらおうじゃねーか、そう構える俺に差し出したのはグラウンドに用意してあったと思わしき箱、その形には見覚えがある。それは、

    『バイオリン…?何でテメェがこんなものを』

    つい先程話しかけてきたエリの誕生日の話の件からすれば、これで轟がバースディソングを弾いてくれるっていう流れが正当だろうが、弦楽器は習得が難しくとてもにわかが弾ける代物ではない。そしてコイツの能力は主に戦闘にのみブッパしている、その他の料理や洗濯などはからきし駄目な不器用な男に楽器の演奏はまず無理だろうが、

    (もしかして俺のために練習していたとか…?)

    クラスの中で弦楽器を嗜んだ経験があるのは八百万と青山だけ、だが出久が出奔している状況下で皆そんな心の余裕などないはずだ。俺と轟は付き合っているのだから特別だろうが、それにしてもバイオリンを弾けるとは思えない。一体どういうことだろうか、理解できないことなどないはずの男をじっと見つめると照れくさそうにはにかむ。

    (ちくしょう、可愛いじゃねェか)

    俺を骨抜きにするツラをなるべく見ないようにして差し出された楽器を受け取ると、

    『そろそろ時間だ。爆豪、バースディソングを弾いてくれ』

    ハ?そりゃそろそろ日付が変わって4月20日になるが、まもなく誕生日を迎えるのは俺で、なのにバースディソングを弾くのも俺ってか?いよいよいったいどういう思考回路をしとるンだ?最近じゃ舐めプ癖は直ったと思っていたが勘違いだったか、すると轟は俺の頬に手を掛けクソ良いツラで微笑み、

    『爆豪は演奏を頼む、俺は楽器弾けないから歌う』

    …マジかそうくるか、コイツの歌声なんてついぞ聞いたことねえけれどイイ声質だからきっとイイ歌声だろう。調弦をしながら音を合わせるために発声させた声は想像通りヨくて俺の耳を犯していく。前言撤回、不器用なコイツの限られたできることに歌唱力を追加だ、

    さて、そろそろ零時が近付いている。俺は背筋を伸ばしバイオリンを咥え、弓を弦の上に置いて弾き始めた、世界中で一番歌われるというその歌を、

    【Happy birthday to you】
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    DONE轟爆ワンドロのお題「触れる」でハロパロ轟爆おにしょた。【熱に触れる】



    ふっ、と右腕に何かが触れた。

    途端、男の集中力が途切れる。文字を追っていた意識を膝上の紙面から引き剥がして、焦凍は軽く瞬いた。
    秀麗な面差しを彩る長い睫毛が、読書に没頭していた余韻を払拭するように、一度、二度、空気を奮わせる。次いで、読書を中断させた要因を探すべく、紅白に分かれた髪の合間から、オッドアイの視線を動かした。
    目線を流した先、ぱたん、ぱたん、と金糸雀色の尻尾を揺らしながら、画集に夢中になっている幼子の姿が目に入る。
    豪奢なソファの上。男の右側から拳ひとつ分の距離を開けた座面に深く腰かけながら、半年程前に拾い上げた人狼の子供が、一心不乱に色鮮やかな挿絵を眺めていた。
    紅玉の瞳が、画集の中で展開される見知らぬ光景を前に、キラキラと鉱石のように輝いている。滴る血潮よりも尚、吸血の渇きを誘発するその瞳に、すうっとオッドアイを眇めながら、だが焦凍は手を伸ばすことなく、静かに幼子の姿を見守るに留めた。
    ツンツンと跳ねる尾と同様の髪色の合間からは、黒褐色の獣耳が覗き、書物への好奇心を示すように、元気よくピンと前向きに立っている。尻尾は、恐らく内心の興奮が無意識に発 2521